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ダイキン、R290内蔵ショーケースで小売業界への販路拡大へ

2021年6月15日、ダイキン工業株式会社はAHT社のR290内蔵ショーケースを「ダイキンブランド」として発売すると発表。グローバル企業がショーケース販売に乗り出すというニュースは、大いに話題を呼んだ。それに合わせ、同社に今回の発表についての背景や、今後の戦略について取材した。

2025年度までに5,000台目標

ダイキン工業は2019年、子会社のダイキンヨーロッパ社を通じてオーストリアの冷凍・冷蔵ショーケースメーカーAHT社を買収。もともと同社は、空調分野で高いシェアを誇る一方で、小売店舗市場では価格競争など、厳しい戦いを強いられていた。

 

低温事業本部営業部 部長の井上 裕幸氏によれば、今回のショーケース販売を切り口にしつつ、また空調営業本部とも協力しながら、得意とする空調・換気提案と培ってきたブランドへの信頼とサービス網を活用しつつ、店舗ソリューションを強化していきたい考えだという。販売を発表して間もないが、すでに複数社からの引き合いが出つつある。

 

内蔵ショーケースの販売先として、第一に考えているのはスーパーマーケットの改装物件だ。地方のローカルスーパー、道の駅からナショナルチェーンに販路を広げつつ、対象もドラッグストア、コンビニエンスストアへと拡大。2025年度までに、5,000台の販売を目標に見据えている。

 

将来検討しているのは、多段ショーケースである。ダイキンは2020年開催の「スーパーマーケット・トレードショー 2020」にて、AHT社の多段ショーケース「VENTO GREEN(ベントグリーン)」を参考展示。当時からアジア市場での可能性を模索していたが、国内への販売を想定した場合、奥行や高さといったデザイン上の仕様を、日本市場に合わせる必要がある。あくまでも、今回発売した平型ショーケースの「次のステップ」として、検討を進めていく予定だ。

あらゆる冷媒を俎上に乗せて判断

ダイキン工業は自社にて「冷媒の環境課題に対するダイキンの方針 」のほか、2021年6月7日に発表された中期経営計画「FUSION25」においても、低GWP冷媒の使用ならびに次世代冷媒の開発に着手するとする。

 

CSR地球環境センター担当部長の山中 美紀氏は、「環境性、安全性、経済性、入手性などあらゆる指標を踏まえ、各アプリケーションに適した最適な冷媒を特定していこうとしています。すでに市場に存在する冷媒を含め、全ての冷媒を俎上から排除しない方針で、それぞれの最適冷媒を用いた機器を開発し、業界標準として普及することに貢献したいです」と話す。

 

2006年に立ち上げられた低温事業は、国内から欧州へと広がり、冷凍機を中心に成長した。FUSION25でも重要な戦略である「グローバル低温」においても、欧州からアジアへと販路拡大は進められているが、実際に技術開発の音頭をとるのは日本の技術者だ。国内、欧州、そしてグローバルにおける技術と製品の横展開を進める循環が、小売市場へも大きく拡大していくことを期待したい。