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クラレイ、CO2冷媒採用にかける思い

水産物、冷凍食品、冷凍野菜等を取り扱う、クラレイ株式会社。同社は福岡物流サービスセンター(福岡LSC)の冷凍設備を、日本熱源システム株式会社のCO2冷凍機へ入れ替えた。2021年3月に導入が完了したCO2冷凍機は、現在順調に稼働している。

CO2、空冷式を選んだ背景

9,400.27㎡の敷地面積、総収容能力20,130tの福岡LSCは、九州のコンテナターミナル基地である福岡市東区にある。今回の冷凍機更新では、クラレイは日本熱源システムのCO2冷凍機「スーパーグリーン」のうち、「SG-F3」(冷却能力:101.7kW )3台、「SG-F2」(冷却能力:67.8kW)2台、「SG-C2」( 冷却能力: 76.4kW)2台を採用。プロジェクト当時の、日本熱源システムのフルラインナップと呼べる製品が採用された形だ。

 

今回の設備更新に際して、約4年前から検討が進められていたと、クラレイの執行役員 物流部 部長、長岡 智之氏は説明する。冷媒の候補として上がっていたのは、CO2直膨もしくはアンモニア/CO2の2種類。アンモニアへの毒性への懸念から、CO2が選ばれた。

 

水冷式であった既存設備から、空冷式である「スーパーグリーン」を採用するにあたり、気温の高い九州地域で空冷式は適さないのではという不安もあった。しかし、その懸念はすでに九州地方への導入実績もあるという事実が解消してくれた。特に福岡の同業他社である芳雄製氷冷蔵株式会社、河合製氷冷蔵株式会社の2社の訪問が、大きな後押しになったという。

 

福岡LSCは1998年に設立。実は10年以上前から、冷却塔の配管の腐食が問題視されていた。同じく水冷式を採用した場合、冷却塔の更新で約4,000万円のコストが見込まれていたという。さらに、福岡市は全国の政令指定都市で、唯一一級河川を持たない。2005年には長時間の断水も経験。水源のリスクがない空冷式は、むしろ利点が多いと判断された。

今後半年間が大きな勝負の分かれ目

「スーパーグリーン」の導入前、長岡氏らは日本熱源システムの生産拠点である滋賀工場も見学。海外部品のバックアップ在庫、メンテナンス体制を見て、万が一のトラブルでも長期間の機械停止は避けられると判断し、導入を決定した。センターを稼働させながらの設置工事は、日本熱源システムのアドバイスをもとに進められた。

 

当初は冷凍機全台を屋上に設置する予定だったが、耐荷重の問題で急遽変更。結果として、ガスクーラーを屋上に配置し、比較的スペースに余裕のあった駐車場に4台、別エリアの駐車場に1台、5階フロアの常温スペースに2台それぞれ設置した。現場として幸いだったのが、年明け暫くはコロナ禍の影響もあり、倉庫に多少スペースの余裕が生まれた点である。そのおかげで、その間をうまく縫って、大規模な荷物の移動も行わずに設置工事を完了した。

 

福岡LSCは下吹き方式でセンター内を冷やしており、作業員の体感では以前よりも冷却度合いは強いという。冷凍機を更新してはじめての夏を迎えていたが、省エネ効果は当初の予測とやや相違があり、調整を行っている状態だ。

 

実は、クラレイのトータルのデマンドはR22を使用していた頃から、電力消費を押さえるために緻密な設計と運用を行っていました。実際に、年間契約デマンドは最大450kWで、周囲の同規模倉庫の平均デマンドは600〜800kWと、2割以上低い数値を誇ります

クラレイ株式会社 執行役員 物流部 部長 長岡 智之氏

 

温度感知のセンサー位置の調整や設定温度の微調整など、今後半年間は試行錯誤をしていく必要があると、長岡氏は話す。日本熱源システムの東京営業部 部長、海老名 聡氏は、この挑戦的な数字も十分クリア可能だと、自信をのぞかせた。

「グリーン経営認証取得工場」の認証

今後、クラレイは北九州市内の西港物流サービスセンター(西港LSC)についても2、3年以内を目安に設備更新を検討している。1991年に設立された西港LSCでは、現在中心的な商材として、今後需要の増加が見込まれる半導体樹脂を取り扱っている。台湾、中国、韓国と諸外国への輸送されるこの製品は非常にデリケートな特性を持つため、よりシビアな温度管理の精度が要求される。

 

機器設置から庫内温度の安定化まで、可能な限り短いスパンが要求される。今以上にメーカー側との協力体制が必要不可欠だ。今後の事業成長の重要なピースである、半導体樹脂の安定的な取り扱いができるかどうか。日本熱源システムにとって、福岡LSCの運転実績はその試金石でもあると言える。

 

西港LSCには、設置スペースという課題も抱えているという。同センターは現在、セントラル方式で機械室に3台の冷凍機を設置している。新たに設置する冷凍機をどこに置くかも、今後の検討材料だ。

 

クラレイは冷媒転換のみならず、環境配慮型のセンター運営に積極的に取り組んでいる。環境保全を目的にした取り組みを行っている運輸事業者に対する認証制度「グリーン経営認証取得工場」に、すべての冷蔵倉庫が認定されているのがその証明と言えるだろう。福岡LSC、西港LSCは、九州で最初の認定冷蔵倉庫でもある(ちなみに、現時点の認定証には自然冷媒機器の採用は審査対象に含まれていない)

 

クラレイにとって、CO2冷媒冷凍機採用は「環境配慮の事業運営」「需要増を見込める製品の安定的取り扱い」「省エネへの寄与」と、多くの意図が盛り込まれている。その課題解決に貢献できるか。日本熱源システムにとって、勝負の半年間がスタートする。