アメリカの大手飲料メーカーであるCoca-Cola社は、コスタリカのグアナカステ州に拠点を構える自社工場に、コスタリカ初の低充填・直膨式アンモニア冷蔵・空調システムを導入した。
再設計プロジェクトに成功
このプロジェクトは当初、再循環式アンモニアシステムを想定していた。しかし総重量3,629kg(約8,000ポンド)というアンモニア充填量への懸念から、再検討することに。そこで、地元のRfrigeracion Y Soluciones De Frio(RSF)社は、Colmac Coil社製のADXアンモニアシステムを採用したという。
RSF社の創業者兼CEOであるリサンドロ・サラス・モラ氏は、コスタリカではまだ採用されていない新しい技術を使って、プロジェクトを再設計する絶好の機会だったと語る。そして2020年7月、1,270kg(約2,800ポンド)の充填量を持つ新システムが設置された。
Colmac Coil 社のウェブサイトに掲載された記事によると、この再設計プロジェクトは13%のエネルギー効率の向上を実現し、コスタリカのINTECO規格とIIAR規格の両方に準拠するように設計されたという。サラス氏によると、エネルギー効率の向上により年間で約25万米ドルの節約になるという。
このシステムでは、再循環システムとは異なり、蒸発器には必要最低限の冷媒のみが供給され、配管内もまた冷却に必要な冷媒のみが循環しています。
RSFのプロジェクトレポートより
この設備は、MTとLTの冷蔵用に731.5kW(208TR)の容量を持ち、プレート式熱交換器とFrick社製の6台のスクリューコンプレッサーを備えている。空調用に2,638kW(750TR)、プロセス冷却用の冷水製造に528kW(150TR)の容量を持つ。
Coca-Cola 社の工場は約43,000m2(463,000ft2)で、コカ・コーラをはじめとする89種類の飲料を製造するために、中米、カリブ海、チリ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンに飲料の濃縮液を供給している。
効率性の向上
同社は設計段階では、パッケージ型のR134a冷凍機を検討していた。しかし冷媒のGWPが高いこと、R134aのソリューションは「アプリケーションゾーンごとの専用システムであり、プロジェクトの要求に応じてシステムのバックアップを実現するために機器の冗長性が要求されるため、投資コストが高くなり、設置電力も高くなる」とプロジェクトレポートで説明されていたため、却下された。
アンモニアのソリューションでは、すべての温度レベルでモデルと電力が同一の機器を選択することができ、機器を標準化することでメンテナンスやスペアパーツの管理を大幅に改善することができたと、サラス氏は説明する。コンプレッサーオイルから回収した熱を、低温室の床放射システムの加熱に利用するというシステム設計も、効率化に大きく貢献した。
「摂氏0度以下の環境では、低湿度での凍結を防ぐために床を暖める必要があります。このプロジェクトでは、摂氏0度以上の温度を確保して凍結を防ぐために、コンクリートの床にグリコールパイプを埋め込んだ最新のシステムが採用されました」(サラス氏)
環境に優しい工場にするための努力は、エネルギー効率の高い冷凍システムだけではない。施設には照明や空調を監視するシステムがあり、数多くの”無駄を省く”ための工夫が施されている。その甲斐もあり、この施設はLEEDシルバー認証を取得している。
このプロジェクトでメインエンジニアを務めたサラスは、CITEC(College of Technologist Engineers)から「Innovative Technologist Award」を受賞したこともある。CITEC賞はそれぞれの工学分野で優れた貢献をした個人に与えられる賞である。
参考
Coca-Cola Installs First Low-Charge Direct-Expansion Ammonia System in Costa Rica
原著者:タイン・スタウホルム
ATMOsphereネットワーク
今回ご紹介した海外事例の記事・発表について詳細を知りたい方・意見交換したい方は、ぜひATMOsphereネットワークにご参加ください!クリーンクーリングと自然冷媒の分野で志を同じくするステークホルダーと交流しましょう。(ATMOsphereネットワーク)