中国では、ルームエアコン(RAC)の自然冷媒化を政府主導で実施。中国家庭電器協会(CHEAA)は、中国の大手メーカーがRACの冷媒をR290へと切り替えられるよう、技術支援を行っている。
コロナ禍でも生産量増加
CHEAAは、中国の家電メーカーの非政府・非営利の業界団体であり、家電分野におけるHCFCやHFCの段階的な廃止などの、政府主導のプロジェクトを担当。中国政府が国連工業開発機関(UNIDO)ならびに大手エアコンメーカーと協力して、持続可能な冷房ソリューションを模索するプログラムにも参加する。
中国は空調機器の生産で世界をリードしており、全世界で年間約20億台設置されるルームエアコンの約7割を生産する。同時に、エアコンの国内市場が世界で最も急成長している国のひとつでもある。2000〜2020年にかけて、中国国内の建物における空間冷却用のエネルギー需要は毎年平均約13%ずつ増加しているという。
RACをHCFCからR290に切り替えた企業の直近の事例では、電子機器メーカーのChang Hongが挙げられる。2019年にはR290冷のモバイルエアコンの生産プロジェクトを開始。そして、1年後の2021年3月に製品が発売されるという形で、プロジェクトは結実した。
厳格な安全基準
UNIDOの進めるプログラムの一環として、瀋陽三洋冷凍設備は2017年に生産ラインのR290転換を開始。プロパンへの移行にあたり、三洋はコンプレッサーの生産・テストで厳格な安全要件を設け、生産ラインの構成計画やラボの場所の選定などを試行錯誤。プロジェクトの評価、研究所の建設、機器の調達、生産ラインの変更などの意思決定をサポートする重要な業務スタッフの組織を編成した。
R290空調の開発初期、可燃性冷媒であることから導入への抵抗は根強かったという。しかし、環境保護省とCHEAAが支援した中国家電協会が関与した空調メーカー・美的のプロジェクトにより、R290が安全かつエネルギー効率も高いと証明され、2016年からは他の企業もR290採用に追随し始めている。
王氏は、この状況を満足して見守る。「この流れは、私たちの世代の責任であり、使命であり、私のキャリアの中で最も意義あることのひとつになるでしょう。10年以上の忍耐を経て、私や仲間たちは非常に大きな成果を成し遂げつつあります」(王氏)