欧州合同素粒子原子核研究機構(CERN)は、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)のアップグレードされた追跡検出器システムに、トランスクリティカル(TC)CO2冷却システムを採用したと、8月11日付の「Applied Sciences」誌に掲載された科学論文で発表された。今回採用されたシステムは、CERNの研究者とノルウェー工科大学および南アフリカのケープタウン大学のパートナーによって開発された。
LHCは、世界で最も強力な粒子加速器で、フランスとスイスの国境に位置する27kmの地下円形トンネルである。超伝導磁石のリングと、粒子のエネルギーを高めるための加速構造で構成され、粒子同士の衝突の結果はATLAS検出器およびCMS検出器によって記録される。
機械的なポンプループに基づくCO2蒸発冷却システムは、他の冷媒に比べて熱物理的特性が良好でより小さなチューブを使用できるため、粒子追跡装置にますます頻繁に使用されるようになっています。
従来のCO2冷凍機システムは、両検出器の特殊な要件に適合せず冷凍プロセス、関連機器、制御ロジックを見直す必要がありました。
CERN発表の論文より
新しい冷却システムは非常に特殊な2段式構造の設計を持つ。地表に設置された一次系は、地下100mに設置された二次系ポンプループのために-53℃の冷気を発生させ、LHCの運転中に発生する熱を排除する。
CERN関係者は、このシステムによりATLAS検出器では300kW、CMS検出器では500kWの公称電力を検出器のボリュームから排気することができ、同時に検出器の熱交換器の冷媒温度を-43℃まで下げることができると説明している。加えて、このシステム設計には数百kWにもなる熱交換量に対しても、安定稼働する高い信頼性が求められると話す。その運転状況次第で、検出器の使用寿命が変化することが予想されるという。
参考
CERN Adopts Transcritical CO2 Cooling for Detector Experiments
原著者:タイン・スタウスホルム
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