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北米

カリフォルニア州、ヒートポンプ式給湯器のGWP制限の可能性浮上

カリフォルニア州の今後の規制では、飲料水、プール、スパ、衣類乾燥機を加熱するヒートポンプに新たなGWP制限が設けられる可能性が高いとされている。空間暖房(および空調)用のヒートポンプに対する750GWPの上限も、将来的に引き下げられる可能性が浮上している。

「世界のヒートポンプの首都」を目指すべき

このメッセージは、2021年11月3日にオンラインで開催された会議「ATMOsphere America」にて、カリフォルニア大気資源局(CARB)の大気汚染スペシャリストであるグレン・ギャラガー氏が語ったものだ。カリフォルニア州では、天然ガスやプロパンを廃止し、電気のみ(最終的には再生可能エネルギーによる供給)に切り替えることで、建築物の脱炭素化を計画している。

 

建物が電化されると、ヒートポンプの需要は高まることとなるが、現在の暖房機器を含むヒートポンプは主にフロンガスを使用しているため、通常通りの運用では、フロン排出量が増加が避けられない。

 

カリフォルニア州では電化が進んでいるため、2030年までにすべての家電製品の新規販売を化石燃料を使わないものにすべきとギャラガーは話す。給湯器に関しては、GWPの低い冷媒をもちいたヒートポンプの使用を期待する。ギャラガー氏はカリフォルニア州が、電化計画によって「世界のヒートポンプの首都」になる可能性があると述べた。

 

同州では、2019年には給湯、衣類乾燥、プール/スパに使用されるヒートポンプがHFC排出量の1%を占めていました。現行の規制の場合2030年には7%に増加まで増加するとギャラガー氏は試算。空間暖房・空調からのHFC排出量は、28%から37%に増加する見込みだ。カリフォルニア州の気候目標達成に必要なHFC排出量をさらに削減するためには、これらのヒートポンプやエアコンが「最大の課題」になるだろうとギャラガーは述べる。

 

また、カリフォルニア州では設置されているHVAC&R機器に使用されているHFCの回収とリサイクルにも関心があり、その分野の規制を強化する可能性がある。現時点では、カリフォルニア州の温室効果ガス総排出量に占めるHFCの割合は約5%に過ぎないが、この5%は非常に強固であり、他の排出源が減少するにつれて割合は必然的に増加すると考えられている。

新しい規制だけでは不十分

昨年、カリフォルニア州では冷媒の重量が50ポンドを超える新規冷凍機に対して、GWP150を超える冷媒の使用を禁止した。一方で、空調機器にはGWP750を超える冷媒の使用を承認している。前者は2022年から、後者は2023年~2026年にかけて段階的に実施される予定だが、ギャラガー氏はこの制限は今後さらに引き下げる必要があると話す。

 

将来的な規制では、空調以外の用途で使用されるヒートポンプにも、新たなGWP制限が設けられる可能性が高いと話す。これらは確定事項ではないとギャラガー氏は念を押しつつも、カリフォルニア州は低GWPヒートポンプの使用を望む背景から、冷媒にはCO2、炭化水素が含まれる可能性は非常に高いと考えられている。現在、米国では家庭用および業務用CO2ヒートポンプ給湯器がECO2 Systems社から、産業用製品は三菱重工グループとLync社から発売されている。

 

R290ヒートポンプは、規制の関係で現在アメリカでは使用されていないようだが、中国のPHNIX社から家庭用R290ヒートポンプ給湯器が発売されており、ドイツのメーカーViessmann社からは大規模な住宅や近隣、産業、業務用の空間調整用ヒートポンプ・ACが生産されている。

 

ギャラガー氏は、カリフォルニア州では技術的に「ニュートラル」であろうとしていると強調しています。つまり、現在の計画では、自然冷媒もHFOも受け入れられるということです。研究者などは最近、HFO-1234yfによる将来的な被害の可能性を警告している。

 

カリフォルニア州では、スティック型・キャロット型両方のアクションを行っている。前者ではGWP制限や、冷媒の回収・再生・再利用の強化を定めた規制などが該当する。後者にはインセンティブが該当するが、動機付けのための資金が簡単に得られるわけではない。CARBは潤沢な資金を持つカリフォルニア州の電力会社と協力して、改修も含めて低GWP機器のみを導入するインセンティブを与えたいと考えているところだ。

 

カリフォルニア州では、2045年までにカーボンニュートラルを実現するという行政命令が出されているが、州はその期限を2035年に引き下げることを計画中だ。「気候変動は目前まで迫っており、カリフォルニア州では火災や干ばつなどの深刻な問題を抱えているのです」(ギャラガー氏)

参考

California ‘Likely’ to Limit GWP for Heat Pump Water Heaters
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

 

原著者:タイン・スタウルホルム

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