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ベニレイ・ロジスティクス、パナソニックの80馬力CO2冷凍機「国内初導入」へかける思い

丸紅株式会社のグループ企業であり、ベニレイグループネットワークの冷蔵倉庫運営事業を担う株式会社ベニレイ・ロジスティクス。同社は国内で初めて、パナソニック株式会社アプライアンス社の80馬力CO2冷凍機の採用を決断。2020年10月に施工が開始し、現在着々と設置工事が進められている。その背景と今後の戦略を代表取締役社長の落合 浩氏に聞いた。

グループ全体の方針に呼応して始まった導入検討

2015年4月のフロン排出抑制法施行により、2020年までで特定フロンの製造が全廃される。さらに2016年のモントリオール議定書の改正により、代替フロンも規制対象に追加。こうした状況下において、丸紅グループも環境問題に向き合うことで、豊かな未来を創造するための地球環境保全対策の具体化を検討し始めた。

 

グループ全体の方針検討と時を同じくして、2016年頃からベニレイ・ロジスティクスでは、ある議題が検討されることとなった。1980年に設立された、大阪府大阪市住之江区の大阪南港事業所の冷凍設備の更新である。

 

合計20,044t(F級19,042t、C級1,000t)の保管能力を有する同事業所は、竣工から冷凍機器を使用し続けてきた。すでに40年以上の継続使用を進めるなか、冷凍機器を入れ替えるにあたり、自然冷媒以外の選択肢はなかったという。

 

「グループ全体の方針に関しては、当然私も耳にしていました。フロンの生産中止は、すなわち冷媒転換が迫られることを意味します。私達の課題とグループの方針が、ちょうど重なって今回の冷凍機更新が実現したのです」(落合氏)

建物の立地環境との相性から選びぬかれたCO2冷凍機

ベニレイ・ロジスティクスは当初、アンモニア/CO2を検討していた。しかし港湾地区に位置する大阪南港事業所には、非常に大型なアンモニア/CO2冷凍機とは相性がよくなかった。試算したところ、仮にアンモニア/CO2冷凍機を設置する場合、建物の一部を取り壊す必要に迫られるばかりか、冷蔵庫スペースを潰し冷凍機の設置場所を確保しなければならない状態だったのだという。

 

「冷凍機の交換が難しいのであれば、既存機器で限界まで稼働し、廃棄と同時に建て直す案も浮上しました。当然その間、事業所の稼働は止めざるを得ません。お客様と共に社会インフラを支え続けてき我々が、その歩みを止めていいのかという思いから、違う冷媒の道を模索することとしたのです」(落合氏)

 

事業所建て直しは、冷凍機だけが理由だったわけではない。築40年を迎える事業所の、コンクリートの耐久性と鉄筋の腐食に伴う強度低下への懸念があったのだ。しかし後に実施されたボーリング調査では、大阪南港事業所は設計基準強度をはるかに上回っていたことが判明。機材さえ整えば、建屋はまだまだ使える。そこで白羽の矢が立ったのは、アンモニア/ CO2冷凍機より小型で軽量なCO2冷凍機だったのである。

 

検討が進められている最中、2018年9月に台風21号が日本に上陸。関西国際空港では高潮被害が発生し、タンカーが連絡橋に衝突したことで多くの孤立者が出た。

 

台風21号は、大阪南港事業所にも甚大な影響をもたらした。屋上では冷却塔が破損し、1階は海水が浸水。エレベーターも故障した。港湾地区という立地環境において、風水害は避けられない。ベニレイ・ロジスティクスでは議論を重ねた結果、「CO2冷媒でコンパクトなサイズ。そして空冷」という条件が定まったのである。

パナソニックへの「信頼」と「冒険」

2019年11月頃、工事元請先である株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングから、パナソニックが国内で冷蔵倉庫用のCO2冷凍機製造販売を開始するという話があった。知名度・品質・信頼性が高く、経営基盤も安定している。そんな同社に対する評価から、ベニレイ・ロジスティクスは有力な選択肢の1社と位置付け検討を始めたという。

 

2020年1月22日には、パナソニック社の東京製作所を訪問。ベニレイグループからは7名が訪問し、パナソニックの冷凍機営業部・商品技術部の担当者から企業概要、商品についてのプレゼンテーションを受けた。

 

その後は彼らと共に、東京製作所内の製造ラインを見学。「関係者の方々の商品開発に注ぐ熱意と真剣さに感銘しました」と、訪問者の1人だった株式会社ベニレイ 冷蔵事業本部の浮島 祐太氏は当時を振り返る。長年培ったノウハウ、開発技術力、商品出荷までの厳格な管理体制、アフターケアの充実。パナソニック社なら安心して、冷凍機の発注ができると確信した瞬間だった。

 

その思いの通り、同社は2020年10月16日に行われた出荷式にて、工事・稼働において算出される消費電力量、庫内温度等のサンプルデータは、すべてパナソニックに提供し、冷凍機事業の発展に寄与すると明言。そこにはパナソニックの今後の展開への後押しはもちろん、今後の自然冷媒機器の普及に繋げたいという思いがあるという。

 

とはいえ、国内初の導入事例への決断は、ベニレイ・ロジスティクスにとって大きな「冒険」でもある。そこにかける思いについて、落合氏は次のように話してくれた。

 

「冷蔵倉庫業界において、イニシャルコストは大きな課題であり難題です。冷凍機器の市場には、もっと多くのメーカーに参入していただき、さらなる技術革新と性能向上、加えて価格競争が少しでも起きてくれるのであるならば、益々冷凍機器の自然冷媒化は加速する。そこに我々が進んでいこうという決意を固めました。

 

それに、私にとってパナソニック社は、子供の頃から今日まで、仕事・プライベートを問わず目にする存在でした。性能・安全性・機能という確かな数字に裏付けされた安全と、長年の事業活動で培った企業イメージから得る安心。そんな彼らが日本初の事業に臨む以上、失敗は許されず、何事にも全力で慎重なケアをしてくれるはずです。その姿勢に答えるべく、我々は設置現場にて得られる様々なデータの提供と試験やテストへの協力、現場見学等に協力し、冷凍機事業の発展に寄与したいと思っています。

 

また、それは我々にとってかけがえのない財産となることでしょう」(落合氏)

今後10年を見据えた展開

ベニレイ・ロジスティクスは、最長10年以内を目安に、神奈川県川崎市にある東扇島事業所の冷凍機更新を検討している。竣工から約25年が経過する同事業所は、地上8階建てでチルド・フローズン・超低温の3温度帯の冷凍設備を備えており、周囲が建物に囲まれている立地条件の為、大阪南港事業所以上に冷凍機更新が難しいという。

 

当然、検討材料は自然冷媒です。同事業所での設備更新が完了すれば、同社が使用する全事業所にて、自然冷媒化が完了することとなります。同社はこの10年以内に、よりコンパクトで高性能低コストの自然冷媒システムの誕生を見守りたいと考えています。目指すは大阪南港事業所と同様に、業務を継続しながらの設備更新です。

株式会社ベニレイ・ロジスティクス 代表取締役社長 落合 浩氏