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オーストリアの旅客列車、CO2空調で30%の省エネを実現

 

オーストリアにて行われている、ドイツ・LiebherrのCO2空調システムを長距離旅客列車に搭載し、その実用性を検証する3年間の調査研究「eco2jet」プロジェクトにおいて、30%のエネルギー効率改善が確認された。この研究は、このシステムが “信頼性が高く、技術的に成熟したコンセプトである “と結論付けている。

鉄道以外の分野での利用も可能

Liebherrの最近の発表によると、このプロジェクトの目的は、従来の冷媒を使用した空調システムに代わる、環境にやさしい鉄道車両用CO2空調システムを開発することだという。この目的のために、CO2を利用したヒートポンプ機能を持つHVACシステムのほぼ量産型の「Fast Track Demonstrator」(FTD)を開発し、プロジェクトのパートナーでもあるオーストリア連邦鉄道(ÖBB)が運営するRailjet車両の客車に搭載した。

 

プロジェクトでは、新しい熱交換器、先進的なシステムアーキテクチャ、インテリジェントな制御戦略を将来的に用いることで、環境への影響を抑えながら、広い運転範囲で乗客の快適性基準を満たした。

 

研究結果によると、従来の空調システムと比較して、ヒートポンプ機能を備えた「eco2jet 」HVACシステムにより、「実際の鉄道輸送において少なくとも30%のエネルギー効率の向上が達成される」ことが確認された。

 

Liebherrは以前、気候室内でFTDの試験を行い、その後ÖBBとの協力のもと、実際の条件下で通常の列車運行におけるシステムの性能を記録し評価している。その結果、Liebherrは「2018年5月から2021年8月までの3年以上に及ぶ『eco2jet』実証フェーズにおいて、CO2空調システムは信頼性と技術的に成熟したコンセプトであることが証明された」と述べている。

 

このプロジェクトは、オーストリア気候エネルギー基金から資金提供を受け、ウィーンのオーストリア研究振興機関(FFG)が支援した。「eco2jet」コンソーシアムには、LiebherrとÖBBに加えて、Advanced Thermal Technologies(ATT)、Institute for Advanced Energy Systems & Transport Applications(IESTA)、Obrist Engineering、Rupert Fertinger、TU-Graz、the Virtual Vehicle Competence Centerといったオーストリアのパートナー企業が参加している。

 

研究結果によると、CO2の空調への利用は、鉄道分野での応用において「革新的で未来志向の技術」であることが示されている。このシステムは、長距離列車だけでなくローカル線、路面電車、地下鉄などにも使用可能だ。トラックや自動車、飛行機など、鉄道以外の乗り物でもエコツージェットの恩恵を受けることができる、と研究者は述べている。

 

鉄道のCO2空調は、決して新しいコンセプトではない。Liebherrは以前、ドイツの主要鉄道会社であるドイツ鉄道と共同で、天然冷媒を使用した空調を鉄道車両に試験導入したことがある。2020年以降、同社の新型車両に自然冷媒を独占的に使用することを目指した。2019年には、中国のエンジニアリング企業であるCRRC大連機関車研究所が、世界初のCO2ベースの鉄道輸送用空調システムの一つを開発した。

参考

Austrian Passenger Train Shows 30% Energy Saving with CO2 Air Conditioning
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。

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