オーストラリアの農業・水・環境省によるオーストラリアの冷凍空調(RAC)業界の報告書『Cold Hard Facts 2021』 によると、同国の大手スーパーマーケットチェーンは新しい冷凍技術への移行を重視しており、レトロフィットやHFOによる既存資産の延命よりも、新しいトランスクリティカル(TC)CO2ラックによる直接店舗の改修を優先しているという。
CO2の浸透進む
2021年12月に発表された『Cold Hard Facts 2021』は、2020年のデータから国内の主な進展、新たな市場傾向について記されている。同レビューの初版は2007年に発行され、2018年からは毎年発行されている。
2021年のレポートでは、CO2冷媒は大型の業務用冷蔵システムを備えた、主流のスーパーマーケット部門に定着していると報告されている。この傾向は加速しており、主にTCシステムに焦点が当てられている。その背景には、低GWPのCO2冷媒は、各企業のサステナビリティ戦略、ネットゼロの目標に合致しているためと報告書は指摘する。
オーストラリアでは、小型スーパーマーケット、コンビニエンスストア、酒類販売店、ファーストフードチェーンに適した冷却能力15kWまでの小型CO2コンデンシングユニットが開発されているという。
スーパーマーケットのラックシステムや食品加工用途においても、カスケードシステム、CO2のみのTCシステム、アンモニア/CO2冷凍機、CO2ブライン冷凍機、2段カスケード冷凍システムなど、様々なバリエーションにおける「高効率オプション」として、CO2の採用が進んでいる。
報告書では、オーストラリアの店舗で炭化水素の冷蔵ショーケースも急成長していることも取り上げられている。HFOも、新規および改装店舗で使用されていると報告書では確認されているが、現在その頻度は低水準に留まる。
「自然冷媒バンク」の成長
報告書では、業務用冷凍機および移動体用における2020年の自然冷媒(CO2、炭化水素、アンモニア)の使用量は、2016年の700トンから大幅に増加し、1500トンになると推定する。スーパーマーケットを中心としたCO2冷媒の使用量は、2020年に約230メートルトンと推定。さらに、コールドフードチェーンで使用されているアンモニア使用量は、5,000メートルトンになると推定する。
一方、規制対象の冷媒の使用量は、2020年での「大きな伸びはなし」と発表された。今後も、より低GWPの冷媒の使用が増加し、オーストラリアの冷媒使用量の平均GWP値は、2019年〜2020年をピークに、今後数年間は着実に減少すると予想されている。
エネルギー消費に関しては、2020年に5,810万台からなるオーストラリアのRAC機器のストックが67,750GWh以上の電力を消費したと推定され、これは国内で生産される全電力の約25%に相当すると報告されている。2020年のRACによるGHG排出量は、6,130万トン-CO2eと推定され、オーストラリアのGHG排出量全体の約12%を占めてている(RACの排出量には、HFCの直接排出量3,300トンが含まれている)
RAC機器のエネルギー効率改善を継続することで、今後10年間でエネルギー関連排出量のピークを達成できる可能性があると報告書は述べている。
参考
Australian Supermarkets Opting for Transcritical CO2 over HFO Blends in Retrofits
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
原著者:トマス・トレビザン
ATMOsphereネットワーク
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