イタリアのEuroklimatは、新設のスーパーマーケットColesに、オーストラリア初と思われる空調用R290チラーを納入した。2022年8月3日にタスマニア州・ハウラのグリーブヒルにてオープンした同店舗は、新しいHVACソリューションをテストしており、店舗の暖房にはトランスクリティカル(TC)CO2を採用している。
「この試みは、当社のグローバルGWPを2,000以上から3未満に低減し、気候変動、廃棄物、飢餓などの主要な持続可能性領域にわたって環境への影響を低減するという弊社の“Together To Zero”の野心に沿ったものです」と、Coles社のナショナル エンジニアリング ストア デベロップメント マネージャー、マイケル・アングレブライト氏は述べる。
店舗の暖房にCO2ヒートポンプを、空調にR290チラーを導入するというのは、オーストラリアで初の試みとされている(WoolworthsとMichael’s SUPA IGA storeは、暖房・空調を統合型TC CO2冷凍システムを採用)
2回路のR290チラー
Euroklimatは、2つの独立した回路を持つチラーを供給し、それぞれに4.5kgのR290を充填(冷却能力:210kW)。入口温度が12℃の場合、チラーは6℃の温度を供給する。このチラーには、R290での運転用に設計・最適化されたFrascoldのレシプロ式半密閉単段コンプレッサーが2台搭載されている。
コンプレッサー容量の調節は、RSHシステムによって行われ、システムから供給される熱電力をユーザーニーズに最適化できるという。Euroklimatは、この技術によってコンプレッサーのオン・オフサイクルの削減、吸込圧力の安定、無制限の運転時間の実現など、コンプレッサーの機械的安定性や高効率性と信頼性が担保されていると説明する。
さらに、4台の低速軸流ファンは外部ローターを持つ電子通信(EC)モーターに直接結合され、部分負荷状態での効率を大幅に向上させているという。

R290をACに使用
R290は、高温・中温・低温のどの用途でも非常に優れた冷媒であり、特に空調領域では、アンモニアやCO2よりも優れていると、Euroklimatは主張。本件はオーストラリア初の事例ではあるが、特に大手小売事業者からの関心は高いという。
営業エリアマネージャーのジョバンニ・ロ・ネロ氏によると、R290ユニット普及の最大の障壁は、290の可燃性という側面に関する「心の壁」だという。また、オーストラリアでは炭化水素機器の使用に関する規制が、州によって異なる。特に大型のチラーやヒートポンプは、屋外設置で冷媒の充填量が少ないにもかかわらず、炭化水素系冷媒の選択が難しいのが現状だ。
「とはいえ、この技術はヨーロッパではもう何年も使われており、オーストラリアに限らず、小売業者はこの技術でさまざまな恩恵が得られると信じています」と、ネロ氏は述べた。
CO2ヒートポンプの搭載
Colesグリーブヒル店では、R290冷凍機に加えてオーストラリアの冷暖房システムプロバイダーであるAutomatic Heating製のヒートポンプ4台(各冷却能力:75kW)を導入している。
Colesの2022年サステナビリティレポートによると、同社の新しいスーパーマーケットでは、現在90%以上が自然冷媒(主にTC CO2)を使用しているという。2022会計年度末には、28店舗のスーパーマーケット(2021会計年度時は14店)と15のColes Liquor店舗(2021会計年度時の8店)で自然冷媒が使用されている。
「ここ数年、オーストラリアもヨーロッパで見られるのと、同じ道をたどっています。自然冷媒の使用について、正しい方向に進んでいることは明らかです」(ネロ氏)
参考
Australia Retailer Coles Trials Propane Chiller for AC
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
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