2021年9月28、29日にオンラインで開催された「ATMOsphere Europe Summit 2021(ATMO EUROPE 2021)」。世界的な飲料メーカーであるRed Bull社は、2021年に冷蔵ショーケースに可変式R290コンプレッサーを導入。2007年当時と比較して43%、2017年当時と比較して8%のエネルギー消費量を削減したと発表した。
システムの刷新
イタリアのEPTA Refrigeration社が供給するケースには、日本電産株式会社(Nidec)のグループ会社であるブラジルのコンプレッサーメーカー、Embraco社の「Smart Drop-In」技術を採用した可変速コンプレッサーが採用されている。
発表にはEPTA Refrigeration社のF&Bマーケティングマネージャー、ダビデ・バルジュロ氏が登壇した。バルジェロ氏に加え、Red Bull社のVISIT調達責任者、ミヒャエル・マルケルト氏も参加した。
私達たちは、常に効率性と持続可能性を目標に、ショーケースのラインナップの最適化に取り組んでいます。
Red Bull社 VISIT調達責任者 ミヒャエル・マルケルト氏
Red Bull社はR290に加えてR600aも採用しており、米国では充填量は145gとなっています。2007年時点の消費電力が12.3kWh/日だったのに対し、新システムの消費電力は6.9kWh/日に抑えられている。なお、COPはそれぞれ1.43、2.34であった。
バルジェロ氏は、可変式コンプレッサーは冷蔵庫が要求する需要に合わせて稼働状況を調整するため、従来のコンプレッサに比べ大幅にエネルギー消費量を削減できると説明する。それ以外にも、可変式ショーケースの利点は「ネットワークの電圧変動に耐えられる」「騒音レベルの低減(62dBA)」「コンプレッサーの機械部品や電気部品への負担軽減」などが挙げられるという。
拡大する市場シェア
ATMOsphere Europeの別のケーススタディセッションに登壇したEmbraco社のキーアカウントシニアアドバイザー、マリノ・バッシ氏によると、可変速式R290コンプレッサーは2021年の内蔵式ショーケース市場において、シェアは17%と控えめだが、2025年には30%、2030年には50%に成長すると予測している。
昨(2020)年、Embcraco社はエネルギー効率、低騒音、非常に厳密な温度制御の必要性を背景に、医療・科学用冷凍装置における可変速炭化水素コンプレッサの需要が高まっていることを指摘している。Red Bull社とEPTA社は、2021年に飲料用クーラーに下記の機能変更・追加を加えた。
- コンデンサー側のエアフローの改善
- エアカーテンと内部のエアフローの最適化
- 外部環境光センサー・温度センサーの設置 など
- 人手が不要のユニットの最適化・自己調整機能」
Red Bull社が最初にEPTAクーラーを採用したのは2007年で、当時の冷媒はR404Aだった。2009年にはR290に変更し、2011年にはデザインを一新。2017年には省エネ型の電子コントローラーを追加するなどのアップデートを行っている。2021年モデルは、2007年モデルよりも250ml缶の収納本数が多い(207本→288本)
切迫している業務用ケースのR290の充填量引き上げは、非常に大きなメリットがあります。今後R290ケースの効率は、さらに向上することでしょう」(バルジェロ氏)
参考
ATMOsphere Europe: Red Bull Cuts Energy Consumption of Cases with Variable-Speed R290 Compressors
原著者:マイケル・ギャリー
ATMOsphereネットワーク
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