2021年9月28、29日にオンラインで開催された「ATMOsphere Europe Summit 2021」にて、ベルギーの食品小売企業Colruyt Group社のプロジェクトエンジニア、コリン・ブーツベルト氏が基調講演に登壇。自然冷媒はエネルギー効率・コスト共にフロン類を上回ると明言した。
冷媒のライフサイクルから考える
ブーツベルト氏は「Refrigerants Deep Dive – from an End User Perspective 」と題したプレゼンテーションで、同氏は各種冷媒の熱力学的特性を比較したオランダの2018年の研究によるデータを参照しつつ、「エネルギー効率とコストの観点から、自然冷媒を使用することに何の問題もない」と明言した。

この表では、蒸発エネルギー値(「Qe kJ/kg」の欄)にてアンモニアで最も高く、熱力学的なエネルギー効率の観点から、アンモニアは「使用可能な場合は最高の冷媒』であるとブーツベルト氏は説明。
R290の蒸発エネルギー値がリストアップされた2つの化学冷媒よりもはるかに高いことも強調した。Colruyt社は中温帯の食品用にR290/グリコールチラーを使用しているほか、R600aを単体のチェストフリーザーに、R290ヒートポンプを店舗の暖房用に使用している。
また「冷却プロセスを行うためにどれだけの体積を圧縮する必要があるか」を示す体積冷却能力の値(VCC kJ/m3と書かれた欄)を見ると、化学冷媒の方が体積冷却能力が低いことが分かったとブーツヴェルトは付け加えた。「つまり、これらの冷媒はより大きなコンプレッサーが必要になり、それが投資コストに影響するのです」(ブーツベルト氏)
ブーツベルト氏は基調講演の中で、冷媒の「単一成分の効果」よりも「ライフサイクルの効果」を重視する必要があると述べる。具体的には以下の項目だ。
- 冷媒製造時の排出量
- 冷媒の使用時の排出量
- 環境悪化に伴う二次的な排出
これを踏まえたうえで、同氏はHFOを使い続けることのリスクを強調。その論拠として、ある種のHFO(特にHFO-1234yf)が環境中でトリフルオロ酢酸(TFA)に分解されるという事実を挙げた。
「TFAは『永久に残る化学物質』と呼ばれるPFASの一種で、水の中に蓄積されます。いったん飲料水に含まれると、それを取り除くことはできません。R1234zeは部分的にR23に変換されますが、これは我々が製造したHFCの中でも最悪のものです」(ブーツベルト氏)
ブーツベルト氏は結論として、HFOの使用実験を続けることの問題点と、今後数十年にわたって負の結果をもたらす可能性について強調した。
私たちは、この惑星である種の実験を行っています。地球はその観客です。もし20年後、HFOを使ったのは本当に良くなかったと結論づけられたら?HFOを使ったことによる廃棄物は、その後も残り続けます。私見ではありますが、私はそのようなチャンスを選ぶことはできません。
Colruyt Group社 プロジェクトエンジニア コリン・ブーツベルト氏
参考
ATMOsphere Europe Keynoter: NatRefs Outperform F-Gases in Efficiency
原著者:デビン・ヨシモト
ATMOsphereネットワーク
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