ATMOsphere(旧shecco)は、HFO(R-1234yf)が大気中の分解生成物であるトリフルオロ酢酸(TFA)を通じて、人体や環境にさまざまな悪影響を及ぼしていることを検証した、新しい報告書を発行しました。
報告書では、HFO-1234yfとTFAの環境中への蓄積について、主に欧州で多くの研究が行われていることを挙げています。化学業界がHFCの代わりに使用しているHFO(ハイドロフルオロオレフィン)は、GWP値が非常に低いため、気候やオゾン層に対する問題はありません。しかし、HFOには他の環境と健康への懸念も生じており、特にR-1234yfは最も広く使われているHFOの中でも、穏やかな可燃性(A2L)冷媒であると報告書では指摘しています。
2012年に欧州で始まったR-1234yfの最大の用途は、モバイルエアコンにおけるR-134a(100年GWP 1,430)の代替でした。さらに、R-1234yfを主成分とするR-513AやR-449Aなどの混合冷媒は、世界数千の店舗や産業施設、アイスリンクなどの用途で使用されています。
R-1234yfが大気中に漏れると、わずか10~14日でその100%が光酸化され、短鎖パーフルオロアルキルカルボン酸(scPFCA)であるトリフルオロ酢酸(TFA)に変化します。TFAはその後、降雨によって地上に降り、非常に耐久性の高い化学物質として、主に河川、小川、湖沼、湿地などの水域に蓄積されるのです。
R-1234yfの排出に関連するTFA
現在は規制されていないものの、最近の多くの研究において、TFAは環境中に蓄積されていること、その主な原因はR-1234yfの排出量の拡大にあると報告書は指摘しています。飲料水中の濃度が極めて低くても、TFAは人体に有害な可能性があり、従来の方法では飲料水から除去することが困難です。
TFAの研究が数多く行われているドイツでは、ドイツ環境庁(UBA)が飲料水中のTFAの人体への「指向値」上限を60μg/L、「予防措置」を10μg/Lに設定しました。環境中のTFAの濃度レベルは、いくつかの研究でこのレベルに近づき、あるいは超え始めている、と報告書は指摘しています。
持続可能な冷凍に特化したドイツのコンサルティング・エンジニアリング企業であるRefolution Industriekälteが2021年に発表した報告書によると、TFAに長期間さらされると、人間の肝臓や甲状腺機能に損傷を与える可能性があります。
TFAとR-1234yfはどちらも、OECD(経済協力開発機構)が制定し、世界中の科学者が使用しているPFAS(ペルフルオロアルキル物質)の定義に該当しています。PFASは、PFOA、PFOS、GenXなどのよく知られた化学物質群を包含し、免疫系や人間の発達への影響、癌やその他の健康被害と関連が指摘されています。
参考
ATMOsphere Report Examines Rising Threat of HFOs and TFA to Health and the Environment
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
ATMOsphereネットワーク
今回ご紹介した記事・発表について詳細を知りたい方・意見交換したい方は、ぜひATMOsphereネットワークにご参加ください!クリーンクーリングと自然冷媒の分野で志を同じくするステークホルダーと交流しましょう。(ATMOsphereネットワーク)