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【ATMO JP 2021】メトロジャパン、R290内蔵ショーケースで年間40%以上の省エネ実現【エンドユーザーパネル】

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。エンドユーザーパネルに登壇したメトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社は、2019年、2020年に3店舗へ200台のR290内蔵ショーケースを導入。その成果とグローバルな視点からみた今後の展望を発表した。

国内初のR290内蔵ショーケース大量採用

メトロは食のプロフェッショナルを対象とした卸売店舗として、25カ国670店舗を展開。日本ではメトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパンとして、2002年に開業し関東圏に10店舗を展開している。

 

メトロは脱フロンのグローバル戦略「F-GAS EXITプログラム」を掲げ、2020年までにCO2排出量を2011年比で20%削減する目標を立てたが、2015年にそれを達成。現在は「2030年までに2011年比50%削減」というさらに大きな目標へ向けて突き進んでいる。

 

こうしたグローバル戦略と連動し、メトロジャパンも既存店舗の脱フロン化に着手。2019年11月に1店舗、2020年1月に2店舗のそれぞれで、R404A採用のショーケースをR290内蔵ショーケースへと入れ替えた。3店舗合計で200台のケースを入れた本プロジェクトは、国内初のR290ケース大量導入として、『アクセレレート・ジャパン』および昨年の「ATMOsphere Japan 2020」でも取り上げられている

 

設備導入以前、メトロジャパンは既存の冷蔵設備に関して、複数の課題を抱えていた。ひとつはHFC使用によるGWP値が高かったこと。また、既存ケースはセントラル方式で一度冷媒漏えいが起こると、修繕に多額のコストが必要なだけでなく、ケース全体の使用停止により商品廃棄・営業停止といったリスクを抱えていた。

 

こうした環境・経済両面の課題をクリアできるとして、同社はすでに減価償却済みのショーケースについて、AHTのR290内蔵ショーケースの切り替えを検討。設備工事がケースごとの電源を用意するだけでよく、将来的なレイアウト変更も容易であるという、CO2冷媒のセントラル方式システムにはない経済性と機能性の利便性から、本プロジェクトが採用されることとなった。

年間で41.7%の省エネを実現

メトロジャパンのマネジメント本部 アセットマネジメント部マネージャーを務める船守 健司氏は、2019年11月に川口安行店で導入されたR290ショーケース65台について、2019年12月〜2020年11月の消費電力を紹介。

 

昨年同時期のHFCショーケースと比較すると、R290ショーケースは年間41.7%の省エネを実現したという。特に注目すべきは、2020年8〜10月にかけてのデータである。HFCは夏場になるとコンデンサー室外機の運転負荷が非常に高まることから、同時期には最大で51.5%もの消費電力削減を記録した。

 

既存のHFCケースは、もともと冷気もれを防ぐために扉が取り付けられています。外気温が25℃以上になると、自動でコンデンサー室外機に水を噴霧する、ウォータースプレー省エネシステムを導入していました。
 
実装済みの省エネ施策を踏まえた比較が今回のデータであるため、一般的なHFCショーケースと比べると、R290内蔵ショーケースはさらなる省エネを期待できるでしょう。
メトロジャパンのマネジメント本部 アセットマネジメント部マネージャー 船守 健司氏
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ちなみに、内蔵ショーケースの運用で排熱が店舗にこもり、空調の消費電力は増えないのかという問題に対しても、R290ショーケースは熱をあまり放出せず、空調負荷は無視できる範囲であったと船守氏は説明した。

自然冷媒ショーケースを日本でもスタンダードに

今回のプロジェクト承認にあたり、メトロジャパンはR290ショーケースへの更新による電気代削減、修繕費用削減を「新たな利益」と位置づけ、その利益で投資金額を回収できるというビジネスケースを作成した。

 

さらに、同プロジェクトは環境省の補助事業にも採択され、投資金額の1/3が支援されることに。「この事業がなければ、作成したビジネスケースは社内基準を満たせず、ショーケース導入も実現できなかったでしょう」と、船守氏は話す。

 

メトロジャパンは今後も、全国の既存店舗においても省エネ型自然冷媒ケース導入を進めていく考えであるが、それには2つの課題があると船守氏は言う。ひとつは、現在国内にてエンドユーザーのニーズを満たす製品がまだまだ少ないという点だ。しかしこの点について、船守氏は悲観していない。

 

ちょうど1年前の2020年2月、私はドイツで開催されたEURO SHOPを視察しました。広大な会場に展示されたショーケースの使用冷媒は、すべて自然冷媒でした。
  
欧州では自然冷媒がスタンダードなのに対して、日本では従来の代替冷媒から脱却できていません。この状況は、まるで自動車の燃費改善を進めている一方で、電気自動車に出遅れる自動車産業と似ています。
 
冷ケース市場においても、テスラのようなゲームチェンジャーが現れれば、自然冷媒機器への切り替えが一気に加速するだろうと期待しています。

 

もうひとつは投資費用の問題だ。既存店舗にとってショーケースや従来設備を更新するには、撤去工事や営業時間の制約があるなど、トータルで非常に高額な投資となりやすい。

 

新事業は投資金額とベネフィットを天秤にかけて判断を下すわけだが、新規店舗は投資にたいして「新たな利益」というベネフィットが生まれるものの、既存店舗の場合は機器更新で売上が増えるわけではないため、消極的になりやすい。結果として、どれだけ冷媒漏えいの問題が生じても、ショーケースが稼働する限り修繕し使用し続けるという悪循環が生まれるのである。

 

しかし、今後は高GWPの製品を使い続けるよりも、機器を移行することが優先されるべき事柄であると船守氏は強調する。メトロジャパンも利用した環境省の補助事業をうまく活用することは、省エネで環境によい機器採用を推進するのに欠かせない。だからこそ、補助事業は喫緊の課題である既存店舗への採択に対して、金額面優遇が必要だという。

 

私達は既存店舗の自然冷媒ショーケース採用を、技術・経済両面の課題を解決しつつ、ビジネスモデルを作ることができました。
 
菅総理が所信表明した「2050年の脱炭素社会実現」は夢物語ではなく、次の世代や子孫のために、私たちエンドユーザーの手で今すぐ取り組むべき課題です。

参考

【ATMOsphere Japan 2021】エンドユーザーパネル メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社発表資料