2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。芳雄製氷冷蔵株式会社と日本熱源システム株式会社の協同発表は、芳雄製氷冷蔵が2020年に実施した倉庫の設備更新について、運転データや自然冷媒の「排熱利用」の可能性について発表した。
排熱利用で消費電力量削減
1935年に創業し、福岡県に3事業所を持つ芳雄製氷冷蔵。そのうち穂波第2センターは2018年に新規オープンし、日本熱源システムのCO2単独冷媒システム「スーパーグリーン」を採用。その経過が良好であることから、2020年には同社にとって最大の規模を誇る穂波第1センター(20,000m3)の17,500m3の設備を、R22からCO2へと切り替えた。
芳雄製氷冷蔵 代表取締役社長の小金丸 滋勝氏は、自然冷媒の冷媒特性に着目。CO2は単位面積あたりの熱量比がR22の約7倍あり、装置の小型化が可能であるという。冷却装置において吐出温度の高さはネックになりかねないが、一方でCO2はエコキュートのように、吐出温度の高さを生かした排熱利用で、トータルのシステムCOPを高めることが可能だ。
実際に、日本熱源システムはCO2冷凍機の排熱回収による省エネシステムの構築を提案。CO2冷凍機は運転時、圧縮機の吐出部分では高段側で140℃以上、低段側で80〜100℃にも達すると、日本熱源システムの設計部長 黒石 広明氏は説明。
この排熱を有効活用するため、「スーパーグリーン」の排熱回収型は、冷媒によって冷凍倉庫を冷却し排熱をブライン水槽で蓄熱、デフロスト用の敗熱源に利用するというシステムフローを採用した。
本システムを2020年2月に納入した穂波第1センターは、F2級(68kW)を1台、排熱回収機能を有するF2H級(68kW)を1台設置。4〜9月にかけて記録された運転データでは、どの月も温ブラインの消費電力量は、全体の0.3%にとどまった。穂波第1センターはバックアップ用の電気ヒータを用意していたが、小金丸氏によると、それらを稼働した実績はなかったという。
約半年の運転データを元にした年間予測では、排熱利用により年間の消費電力量を27.2MWh削減、ランニングコストとして年間462,400円の節約になると同社は予想する。
冷媒特性をさらに引き出す「制御技術」
穂波第1センターに活用されていたR22冷凍機はいずれも定速機だったが、「スーパーグリーン」は負荷追従型のインバータ制御機である。夏場で負荷がピークになると、定速機のサーモ停止回数が減少するため、CO2冷凍機との使用電力量の差は少ない(8月で5.8%の削減)。
しかし、中間期・冬期は負荷追従型のインバータ制御機の性能が発揮されるおかげで、大きな電力削減効果が期待できる。実際に2020年11月のデータでは、R22冷凍機と比較して38.8%の削減効果が得られた。モーターの消費電力量は、モーター回転数の3乗に比例するため、冷却負荷に追従してインバータで回転数を制御することは、省エネ効果が大きく働くのである。
また、「スーパーグリーン」に搭載された各機能も、省エネに寄与すると小金丸氏は言う。冷却器側ファンにもインバータを搭載し高効率化することで、霜付きを除霜タイミングを軽減。現在、冷蔵庫では40〜42時間に1回という長いスパンでデフロストをして、運転効率を維持することができている。
