2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。株式会社焼津冷凍は、2015年より株式会社前川製作所と協力し続けられている、自社設備の大規模更新プロジェクトについて発表してくれた。
冷却設備全体の2/3を自然冷媒機器へ
焼津冷凍は静岡県藤枝市に本社を置き、ベーカリーの株式会社ウィンウィン、農業法人の株式会社グリーンテックといった各種企業をグループに持つ。
同社は「1.我々は、お客様に必要とされ、安心と信頼される仕事をします。」「2.我々は、何事にも挑戦する勇気をもって日々成長します。」「3.我々は約束を守り、すべての人・物に思いやりをもって行動します。「4.我々はお客様との信頼の絆を深め、食文化に貢献します。」という4つの経営理念と、『30年後もこの世の中に必要とされる会社・人財になる』という経営ビジョンを掲げている。
地域に密着した冷凍倉庫業である焼津冷凍は、F4級(-60℃)、F2級(-30℃)、C3級(+5℃)の3温度帯の保管・流通加工を担ってきた。特に超低温の冷凍冷蔵庫は、回遊魚であるマグロ、カツオの品質維持には欠かせない存在である。
そんな同社は、地球温暖化と再生可能エネルギー対策のため、太陽光発電と冷却の両設備の充実を進めてきた。太陽光発電に関しては、本社施設にて5,692枚のパネルを設置し、約1.2MWの発電量を確保。またBCP(事業継続計画)対策として、第3工場、第2工場、事務所棟それぞれに発電機を用意した。
冷却設備に関しては、特定フロン・代替フロンを多く使用していたところから、2015年度より設備の更新プロジェクトを開始。焼津冷凍で使われている冷却設備は、主に次のものが挙げられる。
- 事務所棟(空調)
- 第1冷蔵庫(冷蔵庫、空調)
- 第2冷蔵庫(冷蔵庫、前室、空調)
- 第3冷蔵庫(冷蔵庫、前室、空調)
このうち、同社は2021年2月時点で第2施設棟の冷蔵庫と前室。そして第3設備棟の冷蔵庫と前室の設備を更新。冷却設備の約2/3を、自然冷媒設備へと更新した。
2つの課題をクリアしつつの設備更新
今回のプロジェクトにおいて、株式会社前川製作所 ソリューション事業本部 焼津営業所の渡仲 純一郎氏は、「冷蔵庫を稼働しながらの機器更新」「温度域による機種の限定」という2つの課題をクリアしつつ、設備更新を進めていったと話す。具体的に、各冷却設備は次のように更新が進められた
- 2015年度…第3冷蔵倉庫(1号冷蔵庫、2号冷蔵庫)
R22/R23冷凍庫2ユニット→「パスカルエア」6ユニット(空気)
- 2016年度…第3冷蔵庫(前室)
R22小型スクリュー 2段型冷凍機1ユニット→「NewTon R」1ユニット(アンモニア/CO2)
- 2019年度…第2冷蔵庫(1号冷蔵庫、2号冷蔵庫、前室)
1号冷蔵庫 R22/R23冷凍庫1ユニット→アンモニア/CO2二元冷凍機1ユニット
2号冷蔵庫 R22/R23冷凍庫2ユニット→「パスカルエア」2ユニット
前室 R22レシプロ型冷凍機1ユニット→「コペル-F」1ユニット(CO2)
これらの機器を、第3冷蔵庫では次のような手順を踏みつつ、冷蔵庫を稼働させながら設備を更新した。なお、前室は荷物品質に影響が出ないため、冷却設備を停止して設備を更新したという。
- 「パスカルエア」3ユニットと冷却塔を屋外設置→1号冷蔵庫を運転冷却
- 1号冷蔵庫の二元冷凍機ならびに冷却塔を停止・撤去
- 「パスカルエア」2ユニットを機械室に、冷却塔を屋上にそれぞれ設置→2号冷蔵庫を運転冷却
- 2号冷蔵庫の二元冷凍機・冷却塔を停止・撤去
同様に、第2冷蔵庫は次のような設備を更新した。
- 太陽光キュービクルと、2号冷蔵庫の冷却塔を移設
- 「パスカルエア」2ユニットを屋外に設置→2号冷蔵庫を運転冷却
- 2階に設置されている2号冷蔵庫用の二元冷凍機で1号冷蔵庫を運転→1階の1号冷蔵庫に使用されていた二元冷凍機を停止・撤去
- 1階にアンモニア/CO2二元冷凍機1ユニットを設置→1号冷蔵庫を運転冷却
- 前室は設備を停止・撤去して「コペル-F」を屋上に設置→前室を運転冷却
焼津冷凍に導入された合計4種類の冷凍機は、いずれも環境配慮でありつつ安全性・省エネ性にも優れている。また「パスカルエア」は、必要設備が従来よりも少ないためスペースの確保にも一役買った。
時代のニーズに応え、世の中になくてはならない会社となるために
焼津冷凍 代表取締役社長の松村 勲氏は、発表にて菅首相が2020年に行った所信表明演説に言及する。
その上で、松村氏は冷却設備のスムーズな更新には、「冷蔵庫を稼働しながらの冷却機器更新」「新規冷凍機の設置スペースを確保しながらの更新」という2つの課題をあげる。これらをクリアしつつ、冷蔵庫の業務を止めない、かつ取り扱い荷物量を減らさず、1日で設備の切り替えを行なうプロジェクトの実施が重要であると話した。