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【ATMO JP 2021】東京都、3本柱で独自目標達成へ【政策動向セッション】

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。世界を代表する東京都は、独自の「ゼロエミッション東京」を目標に、3本の柱で2050年の都内代替フロン排出量ゼロを目指す。

3本の柱で排出量増加を食い止め、目標達成へ

2019年12月に策定された「ゼロエミッション東京戦略」は、2014年度比で都内の代替フロン排出量を35%削減し、2050年には排出量ゼロを目指すというものである。政策動向セッションに参加した東京都環境局環境改善部環境保安課 課長代理(フロン対策担当) 金子 ちひろ氏は、本戦略にて世界を代表する大都市としての責務を果たすことが重要と指摘。

 

しかし、2014年度における代替フロン排出量が390万t-CO2だったのに対して、2018年度速報値は540万t-CO2と増加傾向にある。そのため、東京都は目標達成に向けた取り組みとして、次の3本の柱を掲げる。

 

  1. 使用時漏えい防止のための危機管理支援
  2. 機器廃棄時の放出防止対策の実施
  3. ノンフロン機器等の導入促進

 

出口の強化と入り口の支援

「1.使用時漏えい防止の危機管理支援」に関しては、フロン機器使用中の漏えい防止には日頃の危機管理・点検が重要と捉え、中小企業者へのアドバイザー派遣による、簡易点検指導を実施。

 

商工団体等を通じて、商店街など小さな店舗や事務所に対して、2019年度は113件、2020年度は201件でフロン機器の点検方法、記録方法を指導した。

 

各事業者に対して、「フロン使用機器の定期的な点検が義務であることを知っていますか?」とアンケートしたところ、2019年度は86%、2020年度は80%の事業者が、「知らない」と回答しました。
 
ユーザーへの認知が浸透していないという現状が、大きな課題です。
東京都環境局環境改善部環境保安課 課長代理(フロン対策担当) 金子 ちひろ氏
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そのため、2020年度は店舗での訪問指導がコロナ禍で難しいなか、オンラインによる説明会実施。また一般社団法人東京都冷凍空調設備協会に委託し、簡易点検等の説明動画を配信。動画は東京都冷凍空調設備協会のHPでも視聴可能である。

 

また、東京都は都内でのフロン機器の使用実態を把握するため、アンケート調査を実施。無作為に選んだ業態の事業者約13,000件にアンケートを送付している。集計は現在も進められており、公表するか否かも含め検討中だが、その分析をもとに今後の都内における施策の強化に繋げたいと金子氏は説明した。

 

もう1つの出口戦略であり「2.機器廃棄時の放出防止対策の実施」は、2020年度に専門職員である「フロンGメン」を増員。民間の力も借りながら、全件立ち入り指導を実施。2020年度は(2021年1月末時点で)4,717件で立ち入り調査・指導を行った。

 

実際に現場では、空調機器のフロンを回収せず配管を切断していた悪質な事業者もおり、指導のうえ勧告も行ったという。2021年度も引き続き、本取組を強力に推進していく考えだ。

 

「3.ノンフロン機器等の導入促進」については、2020年度は5,000万円の予算額にて、省エネ型ノンフロン冷凍冷蔵ショーケース、ならびに省エネ型低GWPビル用マルチエアコンの補助に対して、前者は1/3、後者は1/4の経費を支援する制度を実施。

 

2019年度の補助実績はショーケース32台だったが、2020年度は1月末時点でショーケース130台と、4倍以上に実績を伸ばした(その他、R32のビル用マルチエアコン1台の補助実績もあり)。

 

導入台数を伸ばした背景として、金子氏はコロナ禍でテイクアウト需要が発生したことを指摘。実際に導入されたショーケースは、いずれも小型・内蔵型であり、機器価格も1台あたり10万円未満のものが約7割を占めた。2021年度は1,300万円の予算額(案)を見込み、補助対象も省エネ型ノンフロン冷凍冷蔵ショーケースに絞っている。

 

2050年度の大きな目標達成に向け、東京都は次の3点へチャレンジを進める考えだ。

 

  • ノンフロン機器への転換加速
  • 使用時漏えい防止のための危機管理の徹底、フロン使用量の計画的削減を促す仕組みづくり
  • 廃棄時のフロン回収が確実に行われるよう、継続した立ち入り指導ならびに廃棄時漏えいゼロへの技術指導

参考

【ATMOsphere Japan 2021】政策動向セッション 東京都発表資料