2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。技術ケーススタディでは有限会社柴田熔接工作所が登壇。コロナ禍でさまざまなプロジェクトが中止してしまった同社だが、2020年度ではおもに2社へCO2システムを納入。自社ラインナップの充実も進めている。
独自開発の「Naturale」シリーズ
柴田熔接工作所では、自社開発のCO2ユニット「Naturale」シリーズを提供。「Naturale」は水冷式・空冷式が選択可能だ。水冷式は年間を通して水温が安定、空冷式は熱交換容量の大きいガスクーラーを採用し、出口温度を安定。それぞれの運転性能はもちろん、かつて合弁会社としてともに開発をしていた、CARELの制御システムを採用することで安定的な運転を可能としている。
自社独自に設けられた設計基準ではコンプレッサーを小分けにした「コンプレッサーラック方式」により、振動を軽減。各種部品は輸入品が多いものの、すべてで自社の定める材質・圧力等の基準を満たすか照合。高圧側設計圧力は10.0MPaと厳しい基準を設け、対応しない機器に対しては自社製造でカバーしている。
そのほか、保護装置が故障しても他方の保護装置でカバーできる保安体制や、設計、機器発注、製造を一貫して行なう品率管理体制。インターネットによりPC、PDA、スマホで運転状況の管理・制御が可能なリモート監視体制など、複数のメリットを持つ。
冷凍冷蔵庫、冷凍食品製造工場にそれぞれ設置
2020年度に「Naturale」シリーズを納入した事例として、営業技術部 営業課 課長の居石 隆志氏は、宮崎市内A社の冷凍冷蔵倉庫、大阪市内B社の冷凍食品製造工場の2事例を発表した。
A社は自社製品の保管のための冷凍冷蔵倉庫の新調に合わせ、水冷式2段ユニットの「Naturale Cold Rack F37W」を2台納入。1台につき60.2kWの冷却能力を持つ同機種は、2020年11月より冷却運転がスタートされ、2021年1月に庫内製品を入庫、運用が開始された。リモート監視システムで温度・圧力・運転状況等を確認しながら運転を続けているが、水冷式によりガスクーラー出口温度は安定しているという。
B社は、自社の冷凍食品製造工場にてR22冷凍機を用い、食品製造ラインの空気冷却・除湿を実施していた。その設備更新として、水冷式の単段ユニットである「Naturale Cold Rack C60W」1台を設置した(冷却能力は245kW)。
単段ユニットのため構造がシンプルであり、W2,800×D1,200×H1,600と小型化を実現。また柴田熔接工作所で設計・製作した設計圧力5.5MPaのシェルアンドチューブ蒸発器と組み合わせることで、冷却空気の安定供給を実現している。
いずれも稼働直後のため実数値はないが、自社はA社の「Naturale Cold Rack F37W」の場合、トランスクリティカル時でCOP1.38、サブクリティカル時でCOP2.36になると試算。同様に、B社事例ではトランスクリティカル時でCOP2.00、サブクリティカル時でCOP4.87になるだろうとしている。
今後の展望として、同社はいくつものプロジェクトで製品の改良を進める。まずは低段側圧縮機を2気筒から4気筒へ更新。2021年にBitzerより大型タイプの低段側圧縮機が発売される予定であるため、それに合わせラインナップ見直しを実施する予定だ。
さらに、高段側圧縮機をIQモジュールによって制御できる設計へと変更。インバータからVARISTEP制御へ変更することで、より幅広い余剰制御が可能になると居石氏は説明する。さらに、多くのエンドユーザーよりリクエストされているフリーザー向けの大型CO2ユニットの製品化も本格化させる。現在搭載しているものより大型の圧縮機へ変更し、ユニット内の圧縮機台数を減らすことでコンパクト化も図る予定だ。