2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。冒頭を飾る業界リーダーセッションに登壇したパナソニック株式会社アプライアンス社は、コールドチェーン全体を包括する、同社の戦略を発表した。
社会課題への素早い対応
パナソニックは産地から輸送、保管、加工、売り場、そして食卓まで、食の安心・安全を支えるコールドチェーン事業を展開。移動式冷凍冷蔵庫やクーリングコイル、冷凍機、ショーケース、業務用冷凍冷蔵庫といった、各工程のニーズに対応した製品を販売してきた。
新型コロナウイルス感染拡大にともなう新たな生活様式に対しては、フードデリバリーに対応した真空調理・パウチ化、高温高圧調理器の開発。Eコマース向けには無人受け取り・鮮度維持の需要に応じた屋内のスマートケース、屋外の冷凍冷蔵ロッカーの販売。
そして24時間営業から時短営業への小売業態の変化に対しては、屋外冷凍冷蔵庫などを市場へと投入するなど、社会課題に向けた素早い動きを見せている。
2030年までに別置型冷凍機のCO2率100%化
パナソニックはもうひとつの地球温暖化防止への取り組みとして、脱炭素社会へ向けたCO2化の加速も紹介。コールドチェーン事業部 事業部長の冨永 弘幸氏は発表にて、2030年までに別置型冷凍機のCO2採用率を100%にすることを、ひとつのゴールにすると話す。
それに向けて、同社が2021年〜22年までに取り組むこととして、「CO2冷凍機の20%のコストダウン」「商品ラインナップの刷新」「CO2ファミリーの推進」「グローバルでのCO2啓蒙活動の促進」といった施策を挙げた。
パナソニックのCO2冷凍機システムは、2010年に発売して以来約10で累計4,700物件に、13,200台を出荷している。グローバルの展開もめざましく、2017年には欧州で累計約1,000台の冷凍機を販売したほか、2018年には中国で大型ラックシステムを、アジアではR600aの内蔵型製品をそれぞれ開発。
炭化水素の内蔵型ショーケースの開発について聞かれると、冨永氏は「一旦は別置型に注力する」と前置きしつつ、市場のニーズに応じて検討を進めなければならないだろうという認識を示した。
おなじく2018年には、北米でパートナーであるHussmanがCO2ラックシステムのほか、R290のウォーターループシステムを発売している。2020年にはオセアニアにて、日本製のCO2冷凍機やウォーターループシステムを発売開始している。
冨永氏はさらに、今後5年で欧州や中国、アジアといった地域でのCO2のマーケットポジションを確立したいと話す。その上で現時点では不透明な部分が多いアフリカに対して、情報収集しつつ展開を考えていきたいとした。
小型店舗から大型倉庫までをカバーできるCO2製品展開
新型コロナウイルスに見舞われた2020年度、パナソニックでは数々のCO2冷凍機を開発・販売している。欧州には4馬力の冷凍機を先行投入し、国内では日中共同開発で生まれた80馬力ラックシステムを展開。NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成業務にて開発した20馬力冷凍機についても、昨年末よりフィールドテストを開始した。
今後は同社の強みであった小型・軽量級モデルのラインナップも増やしつつ、モジュール連結モデルによる系統数の最適化。水冷対応、大型ラックの開発を通して、小型店舗から食品工場・大型倉庫まで対応できる製品ラインナップを目指す。
メーカーという立場として、環境省の補助事業頼みではなく、上記の次世代冷凍機でコストダウンを測り、マーケットでの需要を高めたいと冨永氏は説明する。
モジュールタイプの冷凍機は10〜40馬力までの5機種を用意し、2021年末に発売予定だ。産業用冷凍機の分野においても、マーケットのニーズによっては100馬力、120馬力などさらなる大型システムの展開も検討する余地があるとする。