2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。日本熱源システム株式会社は業界リーダーセッションにて、ここ数年で飛躍的に製品バリエーションを拡大している同社のCO2単独冷凍機「スーパーグリーン」の導入事例と、今後の戦略について発表した。
7種類にラインナップ拡大
CO2単独冷凍機「スーパーグリーン」は、-43℃〜+10℃と幅広い冷却温度に対応し、R22との比較で20〜35%の年間省エネ率改善を達成。2019年度には 一般財団法人 省エネルギーセンター主催(経済産業省支援)の「省エネ大賞」を受賞している。
「スーパーグリーン」は2021年2月現在、合計7種類のバリエーションにまで拡大している。
- F型
- C型
- FF型
- ブラインチラー
- 冷水チラー
- マーガリン製造用
- ビール工場CO2捕集用
もっともオーソドックスなタイプであるF型は、これまでF1型(34kW)、F2型(68kW)と販売してきたが、2019年にはF3型(102kW)を販売し、F型の出荷台数のなかでも半数を占める人気商品となっている。2021年秋には160kWのF4型も発売するなど、さらなる大型化が進められる予定である。
C級冷蔵庫(冷却標準温度:0℃)に対応したC型も、C1型(38kW)、C2型(75kW)を用意。C型は従来機からさらに約30%の省エネを実現したパラレルコンプレッションタイプを、2021年秋に発売予定である。
「スーパーグリーン」は1台でC級・F級を同時冷却できるタイプと、それぞれを切り替え運転できるタイプもある。その機能性の高さから、国内で累計250台の設置実績(2021年2月時点)を重ねてきた。直近では、2020年5月に株式会社キョーワの冷蔵倉庫へ納入。2021年3月には、横浜市場冷蔵株式会社の冷凍冷蔵庫にて、「スーパーグリーン」が運転開始予定だ。
東南アジアのプロジェクトも進行中で、マレーシアに海外第1号となる冷凍機も設置したという。
「スーパーグリーン」は食品工場のフリーザー冷却に対応したFF型もラインナップ。空冷式で冷却水が不要であり、FF300型(46kW)からFF1300型(200kW)まで、7機種をラインナップ。ガスクーラーとの一体型や別置型など、エンドユーザーのニーズに応じたカスタムメイドも対応可能である。
CO2空調への手応え
「スーパーグリーン」の新たな展開として、ブラインチラーの実績も徐々に増えている。30kW〜160kWまで幅広い冷却能力に対応したブラインチラーは、製氷工場(角氷、プレートアイス製造)や冷蔵倉庫(倉庫冷却)での用途に適しており、自社開発したCO2用のシェル&チューブ式熱交換器によって、塩化カルシウムブラインを使用できるようにしている。
従来の冷凍機のメリットを生かしたユニークな製品は、2020年2月に導入した宮下製氷冷蔵株式会社をはじめ、製氷業界を中心に納入実績を増やしているという。
『アクセレレート・ジャパン』が特に注目したのは、工場用空調やチルド水生成に適した冷水チラーである。冷水取出温度が+7℃と、CO2冷媒では非常に高めの温度取出が可能なこのチラーは、すでに関東某所にある大手冷凍食品会社の室内用空調として活躍中だ。
CO2空調の可能性について、代表取締役社長の原田 克彦氏は「すでにできる」という認識を示す。
4つの目標と業界が抱える課題
2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けて、日本熱源システムは次の大きな目標を掲げているとしている。
①冷凍機の大型化
大型物流倉庫に対応するため、さらなる大型機の開発を目指す。日本の高圧ガス保安法の観点から、F級であれば150kWがひとつの限界であると考えている。一方で、同様の問題が生じない産業用システムに関しては、欧州と同レベルの500kWまでCO2で対応できる。
②冷凍機の小型化
大型化と同様に、より小回りが利くタイプの開発も並行して実施する。CO2システムと並行し、同社が提携するFreorのR290内蔵ショーケースの提案も行う。
③冷凍機の省エネ化
C級冷凍機におけるパラレルコンプレッション型の推進、F級冷凍機におけるエジェクターシステムの導入で省エネを進める。
④空調用CO2機の開発
冷水チラーに加え、冷暖房可能なCO2ヒートポンプの開発の推進。
日本熱源システムは、アンモニアを採用した大型機の提案も行っている。そのうえで、市場に存在するかなりの種類の冷凍機が、CO2へ置き換え可能だと原田氏は実感している。