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【ATMO JP 2021】環境省、上流〜下流の対策で脱炭素社会実現へ【政策動向セッション】

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長の豊住 朝子氏は、上流、中流、下流まで包括した日本のフロン排出抑制対策の動向を発表した。

フロン排出抑制法改正の成果に期待

日本も含む先進国では、モントリオール議定書に基づき特定フロンCFC、HCFCから代替フロンHFCへの転換を順次実施。HCFC(R22)は2020年に、新たな生産の終了を迎えた。現在はそこからさらに、温室効果が低いグリーン冷媒(HFOも含む)への転換が課題とされている。

 

日本国内では、モントリオール議定書にもとづく規制措置をオゾン層保護法で担保。フロン排出抑制法でフロン機器の使用時漏えい防止、廃棄時の回収を義務付けるなど、2つの法案を中心にフロン対策を進めてきた。

 

2019年1月1日から実効したモントリオール議定書キガリ改正では、より具体的な代替フロン生産量・消費量の目標が明示。日本は非常に厳しい目標が設定されているなか、一層の冷媒技術開発、導入が求められる状況だ。

キガリ改正の日本の目標値(「ATMOsphere Japan 2021」環境省地球環境局発表資料より)

いわゆるフロン対策の「下流」を担うフロン排出抑制法だが、2015年に改正・施行された後も、廃棄時回収率は4割にとどまっていた。2020年の回収率は50%が目標であり、同年4月1日には改正法が施行されている。

 

改正内容は、主に「機器廃棄時の際の取組」「建物解体時の機器廃棄時の際の取組」「機器が引き取られる際の取組」に分かれており、エンドユーザー、解体工事元請業者、引取等実施者と三者が確実にフロン回収できるよう証明交付、記録保存を義務化している。

 

改正法の施行状況は、例年通り年末にとりまとめる予定です。そこで成果が得られることを、私達も期待しています。
環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏
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上流・中流・下流それぞれの戦略

2020年〜2021年にかけて、日本が脱炭素社会に向かうための重要な宣言・活動がなされた。

 

  • 2020年10月、菅新総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会を目指す」と宣言する
  • 2021年1月、第204回通常国会の菅総理の施政方針演説にて、COP26までに意欲的な2030年目標を表明する等が宣言される
  • 2020年3月に国連へ提出した「日本のNDC(国が決定する貢献)」を踏まえ、長期目線で地球温暖化対策計画の見直しを含む、気候変動対策の審議が進められる

 

現行の地球温暖化対策計画では、2030年のCO2排出量を2013年実績より約32%減となる2,160万t-CO2に設定。エネルギー起源の排出量は2013年より減少を続け、発表時の最新データである2019年実績は、排出量の算定をはじめた1990年より最少を更新した。

 

一方で、代替フロン等4ガス(HFC、PFC、SF6、NF3)の排出量は、年々増加の一途をたどっている。特にHFCの排出量のほとんどを占める冷媒の対策が、非常に重要であると豊住氏は説明する。

 

2050年の目標達成に向けた長期戦略として、環境省は上流・中流・下流の各工程にて、具体的に次の対策を立てるとしている。

 

  • 上流:グリーン冷媒技術の開発・導入
  • 中流:IoT等総合的な技術を組み合わせた使用機器のフロン漏えい防止
  • 下流:機器廃棄時のフロン類の適正な処理

 

ライフサイクルを見渡したフロン対策をしっかり講じ、2050年に向けた経済成長と脱炭素化を実現する必要があります。
 
現在進行中の我が国の今後の気候変動対策への議論を踏まえながら、一層の努力が求められるものと考えております。

2021年度、2022年度の導入支援をさらに推進

冷媒における脱炭素社会の「上流」に一役買っている、「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」。2005年度より導入支援をはじめ、2014年度から採用件数を大幅に伸ばしている。

 

同事業の主な目標は、省エネ型自然冷媒機器の導入によってエネルギー起源CO2を直接削減すること。そして自然冷媒化により、機器使用時のフロン漏えい、整備時・廃棄時のみ回収分にかかる温室効果ガスの排出量を削減することにある。

 

環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏
環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室長 豊住 朝子氏

 

2021年度予算も、前年度と同額の73億円で計上。今国会での成立を待つ形ではあるが、業界にとってもっとも注目度の高い事業のひとつであり、まだまだその存在は大きいところである。

 

2020年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で、執行率が伸び悩んだ部分はあるものの、ぜひ本事業を活用いただき、省エネ型導入拡大にご協力いただければと思います。
 
私達もまた、しっかり翌年度の事業を執行して2022年度に繋げていきたいと考えております。

参考

【ATMOsphere Japan 2021】政策動向セッション 環境省発表資料