2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。業界リーダーセッションに登壇した株式会社前川製作所は、食品工場における自然冷媒・再生可能エネルギー利用の可能性に関して発表。「脱炭素工場」を実現できるヒートポンプソリューションを紹介した。
工場内の「熱のクローズドサイクル」実現へ
セッションに登壇した前川製作所 アドバンスドシステム部門 食品熱エネルギーチームの江原 誠氏は、現在化石燃料と電力のエネルギーを利用している工場において、2段階のステップで「脱炭素工場」実現を目指すことが必要だと説明する。
STEP1は、工場全体の省エネ。STEP2は、化石燃料を電力と展開し、温室効果ガスの排出抑制である。その上で、将来的な技術革新による電化、バイオ燃料の活用を進めるという流れだ。
食品工場でには、乾燥工程におけるバーナー利用時の排熱、調理・殺菌時の排水、クーリングタワーが放出する熱など、20〜50℃の熱が大量に放出されている。これらをCO2ヒートポンプを使用することで、65〜120℃の温度として活用することで。工場内での「熱のクローズドサイクル」が実現できるのである。
工場内の熱サイクルを助けるために、前川製作所ではヒートポンプによるソリューションで、食品工場の3工程(給湯、乾燥、加熱殺菌)において、熱の再利用+省エネが実現できるという。
3工程で輝くヒートポンプ
給湯工程で使用できる湯沸かしチラー「ユニモ」シリーズは、空気熱源、水熱源、空気・水両熱源の3タイプがあり、2005年の納入開始から(2020年2月時点で)累計996台を出荷。出荷先の約3割は海外であり、韓国、中国が多かったところ、近年はタイをはじめとした東南アジアの実績も増やしているという。
蒸気で加熱してお湯をつくるという、従来の化石燃料を使った工程が、湯沸かしチラーで工場内の冷却工程(冷凍機)を用いて電力でまかなえるため、電力のみで温水・冷水を同時供給できるようになる。前川製作所は、同タイプのチラーは約20,000台の潜在市場があると推測する。
乾燥工程では、熱風発生チラーが活躍する。同工程では化石燃料で発生させた上記による空気加熱を行なうが、熱風発生チラーは常温から一気に120℃の加熱が可能となる(同時に冷水の取出も可能だ)。
入り口の空気温度を上げて乾燥を行なうため、蒸気を大幅削減する。工業用水を冷やすこともできるので、工場内のプロセス冷却にも貢献できるのがメリットである。実際に熱風発生チラーを導入した工場では、年間のランニングコストが約190万円削減され、CO2排出量も約80t-CO2減少したという。
加熱殺菌の工程も、これまでボイラー(化石燃料)と冷凍機(電力)による組み合わせが一般的だったという。しかしアンモニアヒートポンプを活用した高音循環ヒートポンプシステムを利用することで、殺菌槽で製品を加熱(65〜90℃の加熱が可能)→冷却槽のチラーで製品を冷却するという2工程を冷凍機のみで行えるという。
前川製作所では、現在数多くのヒートポンプソリューションを持つ。今後もエンドユーザーのニーズに応じて、冷媒やシステム提案の選択肢を広げたいという。