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【ATMO JP 2021】丸川珠代議員基調講演全文

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。本会議では政策動向セッションに、元環境大臣としてCOP21での演説を務めた経験を持つ、自民党参議院議員の丸川珠代氏が参加。その基調講演で、これからの環境対策の重要性について発表してくれた。

記事全文

皆さま、本日は「ATMOsphere Japan 2021」にこうしてご参加いただきまして、誠にありがとうございます。元環境大臣の立場からも、御礼申し上げたいと存じます。これまでフロン対策の局面において、皆様方には機運を高め、政府を後押しし、様々な業界を引っ張る大きな発信をしてきてくださったことに、まず感謝を申し上げたいと存じます。

 

このたびは、新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ事態の中で、オンラインという形での開催となりました。様々な困難を乗り越えてのオンライン開催にご尽力いただいた関係者の皆様に、改めて敬意と感謝を表したいと存じます。また、今回のコロナウイルスの感染拡大によって、ご事業に大きな影響を受けておられる皆様方もいらっしゃったと思います。感染防止のために様々なご協力をいただいている皆様方、本当にありがとうございます。

 

皆様のなかには、コロナウイルスに感染され治療を余儀なくされた方もいらっしゃると思います。お見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様方にお悔やみ申し上げたいと思います。なんとかこの感染拡大を乗り越えて、私達は新しい未来を切り開かなくてはなりません。

 

経済にも大きな打撃を与えた新型コロナウイルス感染拡大に対して、先進国をはじめ多くの国々がグリーンニューディール=グリーンへの投資を掲げたことは、非常に大きな時代の転換を表すものだったと私は感じております。また、昨年オリンピック・パラリンピックが延期となりました。本年東京にて皆様とお会いできますことを楽しみに、開催を願っているところでございます。

 

オリンピック・パラリンピックでも、例えばの金銀銅のメダルは、今回、廃棄された小型家電からレアメタルを集めて作りました。表彰台は廃プラスチックを集め作られました。こうした持続可能性に着目した新しい取り組みも、東京オリンピック・パラリンピックでは行われています。まさに環境対策への取り組みという点で、大きな時代の転換を迎えつつあると、私達は感じずにいられません。

 

そして私達の国では、昨年安倍総理から菅総理へのバトンタッチがありました。そのなかで地球温暖化対策では非常に大きな変化がありました。バトンタッチ後、菅総理の初めての国会となった昨年秋の臨時国会で、菅総理は、2050年カーボンニュートラル=脱炭素社会の実現を宣言されました。これまで皆様も感じておられたかと思いますが、「経済と環境は相反するもの、対立するものだ」という概念が私達の国の主流でした。

 

ところがこの菅総理の宣言によって、政策の根本が大きく転換したのです。「『環境対策が経済成長を後押しするものだ』というのが、これからの政策の根本理念となります」ということを、菅総理はまさに宣言しました。そしてこの宣言は、梶山経産大臣も小泉環境大臣も共に手を組んで前へ進めてきたという背景があります。

 

私は環境大臣として、パリ協定が採択されたCOP21に参加しましたが、あの頃の経済産業省と環境省の関係からは、想像もつかないような世界が今広がっているとを感じています。菅総理の宣言のなかでは、経済と環境の好循環を回して、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、成長戦略の柱として環境対策を据えていくということが示されています。

 

その後、菅総理は地球温暖化対策推進本部という、政府で地球温暖化対策を進める各閣僚が揃った会議にて、地球温暖化対策計画の見直し、エネルギー基本計画の見直し、そしてパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略ーこれらは私達の環境対策の三本柱になるわけですーの加速化を、各関係閣僚に指示しました。

 

代替フロンについても、地球温暖化対策計画で触れられていますが、まだ議論は始まったばかりで、どの方向に向かっていくかは議論されていません。関係者の皆様方にも、これから多くのご意見を頂戴して、よい方向へ進めたいと思っているところです。

 

そして年が明けた1月。菅総理の施政方針演説では非常に力強く、環境対策はもはや経済の制約ではなく、成長戦略の鍵となるものであるとうたわれました。また2021年に開催されますCOP26までに、我が国の意欲的な2030年目標を示していくことも、同時に示されたのです。

 

私達国会議員も、国民の代表として「気候変動はもはや危機的な状況にある」との意識を国内外と共有するべく、2020年11月に「気候非常事態宣言」を衆参両院で採択いたしました。私もその発起人のひとりとして成立に関わったわけでございますが、与野党を超えて、私達の気候変動の社会への影響、環境への影響は危機的な状況であるということを、共有できたのは大きな成果でした。

 

災害級とも言える猛暑によって、熱中症の救急搬送が非常に増えておりまして、亡くなる方も増加しています。そして数十年に一度と言われる規模の台風が、毎年のようにこの国を襲い、甚大な被害をもたらしています。もはや対策は待ったなしだという意識は、与党であろうと野党であろうと関係ない。そのような気持ちで私達は宣言を採択するに至りました。

 

同時に、この宣言は第一歩に過ぎないという認識もまた共有しています。これから政府だけではなく国会をあげて地球温暖化対策を加速させていくという決意を、私達は共有しています。

 

この大きな転換のはじまりになったのは、COP21だったことを振り返らずにはいられません。私は、先輩でありフロン対策において私達の国でまさに先頭を切ってくださった、故・望月義夫先生からバトンを引き継ぎ、2015年11〜12月にかけてパリで行われたCOP21に、環境大臣として出席いたしました。

 

京都議定書に代わる国際的な枠組みは長い間存在せず、長い長い議論の積み重ねの末にCOP21は開かれました。正直、最終日まで一致した結論を見るかどうか分からない状況でありました。毎晩徹夜の議論を交わし、夕方6時からの議論が朝6時に終わることが数日間続いたのです。

 

会議の最後には、文言がひとつ違うということで会議がはじまらず、このまま皆さんがギャベルを打つ瞬間を迎えることができるのだろうかという思いで、最後の場面を迎えました。この協定が合意をみたときは、会場全体が非常に大きな感動と、未来への希望に包まれました。しかし、その場面に居合わせた私ですら、こんなにも地球温暖化対策が世界各国で加速するということを、その時点では想像できませんでした。

 

ひとつの大きな鍵となったのは、金融が動いたことであろうと思います。私達の国でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という、150兆円もの資金を預かって年金運用にあたっている基金が、気候変動に対して大きな意識を持って運用すると宣言し、ここからESG投資などSDGsの達成に向かい、大きな金融の流れが生まれたわけであります。

 

この流れは、とどまることは決してないと、私達は確信を持って政策に臨んでいますが、日本の企業の皆様は、いったいどのくらいこれが加速するのか、というところに大きな関心を持っておられると感じます。

 

このパリ協定の素晴らしいところは、先進国も、京都議定書では発展途上国と位置づけられていた国々も、参加している国々はすべて、自分たちの目標を持って取り組みに参加するという、非常に公平な合意になっていることだと思います。私達はまずCOP26で、野心的な中期目標を2030年に向かって示していくことに向けて、政府に対して働きかけを行っていきたいと思っております。

 

まずこの国会では、地球温暖化対策推進法の改正を予定し、審議に入ることが確定しております。ここではまず、すでにある技術を、いかに社会のすみずみまで広げていくのか、あるものを確実に実現していくための後押しが書き込まれていくことになると思います。そして、地域ごとの取り組みを、事業者のみならず地域ぐるみで加速していくことを後押しする内容にもなっています。

 

一方で、すでに皆様は耳にされているかと思いますが、昨年12月に「カーボンプライシング」について、菅総理から梶山経済大臣と小泉環境大臣、それぞれに対して検討するよう指示されました。これを受けて省内の研究会がこの2月に経済産業省ではじまり、環境省でも一旦進めていた議論を再開させています。

 

私は自由民主党のなかで、地球温暖化対策の調査会の会長(講演当時)を務めております。政府の議論のスタートと平仄を合わせまして、党でも議論をはじめています。また、これはかつてないことでありますが、今後自民党政調会長のもとに総合エネルギー戦略調査会と環境・温暖化対策調査会という、中長期のエネルギー政策と地球温暖化対策への取り組みについて議論をする2つの調査会の会長が、ひとつの勉強会という形でカーボンニュートラルについて議論することになっています。

 

いずれの議論においても排出権取引や炭素税等、なにかひとつの決まった形を目指しているわけではありません。J-クレジット制度から炭素税まで幅広く議論するわけですが、肝心なことは「日本の経済成長に資する形」でカーボンニュートラルに向けて、我が国のカーボンプライシングはどうあるべきか議論するということです。

 

すでに菅総理からの指示で、革新的な環境イノベーションに対して2兆円の基金を設け、企業のイノベーションを支援することが決定しております。またアカデミアにおいても、このイノベーションを支援していくと掲げられております。

 

カーボンプライシングをはじめとする規制の強化は、支援の強化と一対となって、経済成長を後押しするものでなければならないということを、環境省も経済産業省も、また総合エネルギー戦略調査会も環境・温暖化対策調査会も心をひとつにしているところであります。この点を踏まえながら、議論をじっくり行い前へ進めていきたいと、考えているところです。

 

さて、私達はフロン類対策推進議員連盟(以下、フロン議連)を自由民主党のなかに設けております。このフロン議連ではATMOsphereの議論に非常に関心を持ち、また皆様の活躍を後押ししなければいけないと考えながら政策に臨んでおります。フロン対策というのは、皆様もご承知のとおり支援と規制の強化が一対となり、セットで皆様にご支援およびご理解をいただいております。

 

これからも、ノンフロン化というのは大幅な省エネにも貢献するということで、本日お集まりの技術者の皆様、研究者の皆様、そして何よりメーカーの皆様、自然冷媒を導入いただいている現場の皆様方と、心をひとつにしてこの議論を進めていきたいと思います。ぜひこれからも連携して、2050年カーボンニュートラルを目指しまいります。

 

どうぞよろしくお願い申し上げます。