2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。小売業界にて長らくCO2機器の導入を進めてきた株式会社ローソンは、2030年、2050年のさらなる目標を提示。さらにセッションでは、昨年開催の「ATMOsphere Japan 2020」で話題になった、完全ノンフロン店の効果も発表した。
2020年、2030年、そして2050年の目標達成へ
ローソンは「2020年度省エネルギー中期目標」として、同年度までに1店舗あたりの電気使用量を2010年度比で20%削減を掲げていた。CO2冷媒要冷蔵器をはじめとした施策が功を奏し、発表時点の2021年2月時点でおおむね目標が達成できる見込みであるという。
同社はグループ理念「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」の下、「圧倒的な美味しさ」「人への優しさ」「地球(マチ)への優しさ」という「3つの約束」実現により、SDGsに連動した取組を進めるとともに、企業価値向上・持続的成長を目指してきた。社内に立ち上げた「SDGs委員会」を、2021年3月より「SDGs推進部」に名称変更。経営戦略本部の配下に移管し、コーポレート・ガバナンス機能との連携強化を図る予定である。
加えて、ローソンはすでに次の10年を見据えた「2030年目標(KPI)」を策定。複数の課題に対する目標のうち、CO2排出量削減に関しては1店舗あたり2013年度比で30% 削減を設定。省エネ施策と組み合わせたさらなる取組を推進する。
それに合わせて、ローソンは2030年目標に向けたロードマップを作成。「既存連省エネ施策」「再生可能エネルギー活用」「省エネ型新店モデル」「出退店・建て替えによる機器更新」を計画的に実施し、進捗管理していく予定だ。
また、ローソンは2030年の「さらなる先」も見据える。同社は「Lawson Blue Challenge 2050!」〜“青い地球”を維持するために!〜を掲げ、脱炭素社会およびSDGsを目指す日本そして世界の姿に貢献すべく、2050年KPIとしてCO2排出量100%削減を目指す。
2019年オープンの「完全ノンフロン店」の希望、課題
ローソンはパナソニック株式会社アプライアンス社の技術協力を得て、2010年度よりCO2冷凍冷蔵機器の導入を開始し、2014年度からは原則ノンフロンを標準仕様として導入することに。2019年度からはサンデン・リテールシステム株式会社、2020年度からはフクシマガリレイ株式会社の協力も得ながら、2021年2月末時点で全国4,160店舗に機器の導入が完了予定である。
ローソンはこうした機器新設・更新に加え、自然エネルギー活用・最新省エネ機器を取り入れた「環境配慮モデル店舗」をオープンし、省エネ機器等の効果検証を実施。効果が確認できた設備に対して標準仕様として他店舗展開をしている。
2019年度にオープンした慶應義塾大学SFC店は、当社初の「ノンフロン店」として大きな話題を呼んだ。使用冷媒は別置型・内蔵型ともにCO2冷媒のケースを使うほか、食材保管用の冷凍冷蔵庫・製氷機はホシザキ株式会社の協力を得て開発された、内蔵型炭化水素機器を採用。また本店舗には、株式会社富岡電子工業のR600(イソブタン)食材保管用冷蔵庫(ポナコン)も設置されている。
2020年度はコロナ禍で営業時間が短縮されるなど、さまざまな要因が重なったためあくまで参考値と松谷氏は説明するが、2019年10月〜2020年9月の電気使用量は、R404A機採用の店舗の平均値と比較して15.3%の削減を実現。
今回フィールドテスト機として運用された炭化水素冷媒機器は、製品化がまだでであるためホシザキとは技術モニター契約という形で導入が実現。契約期間を2021年3月まで延長し、以降は製品化した同機種を設置予定であったが、ガイドライン策定のスケジュール等の背景から製品化ができなかった。
しかし、同社はホシザキとの事前協議を行い、同等スペックのノンフロン製品を(製氷機を除き)特注生産し順次切り替えていく予定である。炭化水素冷媒機器の普及については、運用ガイドラインの発行時期、メーカー各社の製品化時期が未定であることなど、懸案事項が残るため小売店への導入は足踏みしているのではと松谷氏は推察する。