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 【ATMO JP 2021】日本冷蔵倉庫協会、自然冷媒使用率が5年で倍増【エンドユーザーケーススタディ】

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会は、環境省の補助事業により着実に進む、会員企業の自然冷媒化の詳細なデータを発表してくれた。

R22の大幅減、自然冷媒使用率は倍増

日本冷蔵倉庫協会は、冷蔵倉庫業者が各地で組織する46地区協会を正会員とする中央団体である。冷蔵倉庫の適正運営を確保するため、冷蔵倉庫の機能維持・向上、経営基盤の安定・レベルアップを支援し、事業を高度化させ国民への食料・食品の安定供給への貢献を目指す。

 

652社、1,189事業所、所管容積27,911,860m3となる会員に対して、日本冷蔵倉庫協会の環境安全委員会は「節電等電気使用に係る実態の把握」「冷媒問題への対応の推進」「地球温暖化への対応の推進」という3柱で各種取組を実施。

 

特に冷媒問題に関しては、国土交通省及び環境省方針に基づき、自然冷媒の普及促進に努めてきた。冷媒に関する啓蒙のため、各ブロックにて「冷媒フロン類取扱知見者講習」を開催。また環境省の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」を積極活用し、省エネ型自然冷媒機器の導入を促進してきた。

 

委員会はこれらの活動を、各冷蔵倉庫の使用冷媒や管理の現状を年次調査「冷媒調査」としてまとめている。同協会の環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏は発表にて、最新2019年度(2020年度調査)のデータを発表した。

 

冷媒の使用状況の推移だが、2011年度には使用率が80.9%あったHCFC(R22)が、2019年度には53.1%(前年度比5.1ポイント減)に。代わりに自然冷媒の使用率は15.0%から36.7%(前年度比4.9ポイント増)と、いずれの数値も過去最高(過去最低)を記録した。

 

そのうえで、小金丸氏は2021年度調査(数字は2020年度)は、R22の使用率は50%を切ると予想。自然冷媒の使用率はこの5年で倍増(2014年度は18.8%)しており、小金丸氏はその要因に環境省の補助事業が大いに作用していることを挙げた。

  

R22の減少ペースは、今後の新たなソリューションの提案によりさらに加速するチャンスがあるとかんがえております。同様に、HFCも前室用のソリューションが増えていることを考えると、さらなる使用率減少が期待できるでしょう。
 
いずれにせよ、政府による補助事業の継続が大きな鍵を握ると思います。
一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏
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アンモニア/CO2の台頭、CO2への期待

つづけて、小金丸氏は自然冷媒の内訳も公開。2012年度はアンモニア直膨が73.6%と圧倒的な使用率だったが、2015年度にはアンモニア/CO2が台頭。2019年度は同ソリューションが67.0%と最多で、アンモニア直膨は29.4%に低下している。さらに、まだまだ数字は低いものの、CO2単独冷媒のシステムも、2018年度の1.3%から2019年度には3.3%と、2倍以上に増えている。

 

中小規模の設備・施設にもCO2単独冷媒は採用しやすい。特に従来のR22分散型設備を採用していた倉庫は、CO2の空冷式システムが非常に置き換えやすいため、今後の増加率は、非常に注目すべきと小金丸氏は述べた。

 

電力使用量の原単位(kWh/設備t)についても、日本冷蔵倉庫協会は1990年度の179.5kWh/設備tを基準値に、2020年度には15%削減の153kWh/設備t、30年度には20%削減の144kWh/設備tを設定。2020年度目標は2015年度で達成水準をクリアしたが、そこから数値は横ばい傾向にあった。

 

その要因として、小金丸市は近年、荷捌き場を冷却する倉庫が増えたため、その容積が増えた分電力量の増加が起きていると説明。そのうえで、今後は荷捌き場にも対応した自然冷媒機器の設置が進むことで、随時電力使用量も減少すると考えている。

 

私達の会員には、脆弱な財政基盤のなかで倉庫を運営する企業も多いため、環境省の補助事業は非常にありがたい存在です。事業開始以降、毎年約50事業所程度が採択されているなど、設備更新の大きな後押しとなっています。
 
それほど効果の大きい事業だからこそ、この5年で自然冷媒の使用率が倍増しました。今後も事業を継続していただくことで、今後5年後、さらにその使用率は倍増すると期待しています。

 

参考

【ATMOsphere Japan 2021】一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会発表資料