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【ATMO JP 2021】注目トピックのハイライト

2020年2月15日に開催された、自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。オンライン配信では合計7種類のセッションにて、業界を牽引するリーダー達が最新事例・開発動向等を発表した。各発表のなかから、特に注目したいトピックを振り返りたい。

業界リーダーセッション

パナソニック株式会社アプライアンス社

  • 2030年までに別置型冷凍機における CO2冷媒採用を100%にする長期方針を掲げる。
  • 2020年までに4,700物件に13,200台のCO2冷凍機を出荷。
  • 2020年度には4馬力冷凍機、80馬力冷凍機、20馬力水冷式冷凍機を発売。2021年度末には10〜40馬力(空冷・水冷対応)のモジュールタイプ冷凍機を発売。
  • 小型店舗・大型店舗・食品工場・大型倉庫と業務用・産業用までカバーできるラインナップへ。

日本熱源システム株式会社

  • C型、F型、FF型、ブラインチラー、冷水チラー、マーガリン製造用、ビール工場CO2捕集用と製品バリエーションが拡大。
  • F型は2019年にF-3型(102kW)、2021年秋にはF-4型(150kW)と大型化を促進。
  • C型はパラレルコンプレッション型を2021年秋に発売。従来機種より約30%の省エネを実現。
  • 30〜106kWの冷却能力を持つ冷水チラーは、CO2による工場空調へ大きな期待。

株式会社前川製作所

  • 工場の温室効果ガス削減の重要要素である「熱再利用」「省エネ」を実現できる分野として、給湯・乾燥・加熱殺菌の各工程におけるソリューションを紹介。
  • 給湯ソリューションではCO2湯沸かしチラー「ユニモ」シリーズが、2005年から現在まで996台の納入実績。潜在市場も約20,000台と予想。
  • 乾燥ソリューションではCO2熱風発生チラーを展開。2010年より92台を納入。
  • 加熱殺菌ソリューションでアンモニアヒートポンプを展開。潜在市場も約2,000台を予想。

政策動向セッション

自由民主党参議院議員 丸川 珠代氏

  • 2020年秋の臨時国会にて、菅総理が2050年カーボンニュートラルを宣言。これまで経済と環境対策は相反する問題とされていた国会内で、「環境対策は経済を後押しする」という根本理念を作り上げた。
  • 2021年1月の施政方針演説においても、同様の意見を強調。今年開催されるCOP26に向け、意欲的な「2030年目標」を示すと宣言した。
  • 2020年11月には、気候変動問題が危険な状況にあることを示す「気候非常事態宣言」を、衆参両院で採択。丸川氏も参画したこの宣言は、与野党の枠組を超えて環境問題に取り組むという姿勢が示された。
  • 閣僚も参加した地球温暖化対策推進本部では、地球温暖化対策計画の見直し、エネルギー基本計画の見直し、パリ協定に基づく成長戦略という3つ柱のもと、各政策の見直しの加速化が指示された。

環境省地球環境局

  • 2020年の回収率50%実現に向け、2020年4月1日にフロン排出抑制法の改正法が施行。
  • 2019年度の温室効果ガス総排出量は、前年度に続き最少を更新。
  • エアコン等の冷媒に使用されるHFCの排出量は、HCFCからの切り替えに伴い継続的に増加。
  • 「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」の予算は、前年度と同様に73億円で閣議決定。

東京都環境局

  • ゼロエミッション東京。都内のHFC排出量目標を2030年度に(2014年度比)35%削減、2050年にゼロを掲げる。
  • フロン使用時漏えい防止および機器廃棄時のフロン放出防止対策のため、2021年度事業者への立入指導・動画配信などの周知を徹底。
  • 2020年度のノンフロン機器等導入促進補助事業は、R600a、R290のショーケース130台の導入を支援。2021年度予算額(案)は1,300万円。

経済産業省製造産業局

  • 家庭用冷凍冷蔵庫はR600a、自動販売機はR600aおよびCO2を中心に、新規出荷分において冷媒転換が完了(一部R-1234yfも含む)
  • 小型業務用冷凍冷蔵庫、業務用エアコン、家庭用エアコンは代替冷媒の候補を検討中である、経済産業省が開発を支援。
  • 指定製品の新たな追加に向けた検討として、「製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策WG」を2020年2月14日に開催。2021年のWGも、3月に開催予定。

エンドユーザーパネル

メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社

  • 脱フロンのグローバル戦略として、新たにCO2排出量の削減量目標を2011年比50%削減に決定。
  • 国内では3店舗に合計200台のR290内蔵ショーケースを採用。日本初の大規模炭化水素ショーケース導入事例として注目。
  • 川口安行店にて、HFCの既存システムと比較して年間41.7%の省エネを達成。

株式会社エー・ピーホールディングス

  • 2020年3月期での決算では、1月時点で昨年比100%以上にて推移していたものの、新型コロナウイルス感染症拡大で急激な下落へ転じる。
  • 第二波の可能性や新たな生活様式に対応するため、デリバリー事業、食堂事業など中長期的な取り組みに挑む。
  • 社会価値・経済価値の同時実現のため、将来的な環境配慮の活動も視野に入れた事業継続を目指す。

株式会社ローソン

  • 2020年度省エネルギー中期目標(1店舗当たりの電気使用量を2010年度対比で20%削減)は、おおむね達成見込み。
  • 2030年の目標として、CO2排出量削減を2013年度比30%削減を目指す。
  • 『Lawson Blue Challenge 2050 !』 ~“青い地球”を維持する為に!~において、2050年までにCO2排出量100%削減へ。
  • 環境配慮モデルの慶應義塾大学SFC店での炭化水素冷媒機器効果検証では、コロナ禍で営業時間が減少するなか昨年対比(R404A機器)で15.3%削減。

エンドユーザーケーススタディ ー 1

株式会社ベニレイ・ロジスティクス&パナソニック株式会社アプライアンス社

  • 大阪南港事業所にて、合計18台のCO2冷凍機を採用。またそのうち、国内初となる80馬力冷凍機は10台採用された。
  • 屋外設置のガスクーラーには、間接散水パッドおよびパッドのワイヤーガードを設置。デスーパーヒータも、機械室放熱を避けるために屋外へ設置した。
  • 屋内設置の80馬力冷凍機には、200Lの大容量タンクを内蔵。
  • 5階すべてのフロアにて、「オールCO2冷凍倉庫」を実現

株式会社焼津冷凍&株式会社前川製作所

  • 平成27年度に第3冷蔵庫の本庫を、R22/R23冷凍機2台から「PascalAir6台」に切り替え。その後平成28年度、平成31年度にそれぞれ機器の入れ替えを実施。
  • 冷蔵庫の業務を止めず、荷物量を減らさず、品質確保のために1日で設備切り替えを実施するという課題をクリア。
  • 2015年〜2020年12月までで、自然冷媒機器により計11,957.3 t-CO2を削減。2020年4月〜12月までの省エネ実績は、全体で29.5%削減だった。

技術ケーススタディ

Embraco

  • 効率比較、熱レジーム評価にて、R290の優位性を提示。500gへの充填量拡大によって、業務用製氷機、業務用リーチイン冷凍庫、冷蔵庫を中心に用途拡大が期待される。
  • 株式会社ダイレイのフードストッカーでは、R404AからR290のシステム再設計で協力。冷媒充填量が210g→85gに減り、消費電力も改善された。
  • 低速R404Aコンプレッサーから可変速R290コンプレッサーに切り替えることで、最大35%の省エネ効率が期待できる。

CAREL Japan株式会社

  • 独自のCO2イジェクターシステム「emj」は標準システムで9.6%(東京の平均気温を想定)の省エネ効果が期待。アジア初の事例である中国では、システム安定化効果に寄与。
  • 日本では、200台以上のトランスクリティカルCO2システムにラックコントローラ「pR100T」を提供。日本熱源システム、パナソニック、柴田熔接工作所などで採用。
  • R290のIR33+VCCソリューションは厳しいテストもクリアし、定速システムと比較し26.3%温度が安定した。

有限会社柴田熔接工作所

  • 宮崎市内のA社にて、CO2冷凍システムの「Naturale Cold Rack F37W」を2台納入。2020年11月より運転開始し、水冷式によりガスクーラー出口温度も安定している。
  • 大阪市内のB社には、「Naturale Cold Rack C60W」を1台納入。単段ユニット採用により構造をシンプル化、小型化を実現している。2020年末より運転開始。
  • 今後は低段側圧縮機を2気筒から4気筒へ変更し、高段側圧縮機はIQモジュールによる制御を可能にする。モデルの見直しによるコンパクト化も実施予定。

エンドユーザーケーススタディ ー2

一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会

  • 会員事業所の使用冷媒推移は、2019年度にてHCFCが53.1%、自然冷媒が36.7%に(9.8%はHFC)。2020年度のHCFC使用率は50%を切ると予想。
  • 2019年度の使用自然冷媒の内訳は、アンモニア/CO2が67.0%、アンモニア単独が29.4%。CO2は3.3%と少ないが、前年比では2倍以上の伸びを見せている。

芳雄製氷冷蔵株式会社&日本熱源システム株式会社

  • 2020年4月より、穂波第1センター8,000設備tのうち、7,000設備tをR22からCO2に切り替え。2020年4月〜12月のデータで、22.3%の消費電力削減を記録した。
  • コンプレッサーの吐出熱を利用して温水・温ブラインを作り出している。ガスクーラーで外気放出する熱も、温熱源として有効活用している。
  • 冷媒特性だけでなく、気候変動や庫内負荷変動に対する高い機器制御パフォーマンスを発揮することで、さらに安定した省エネ効果が期待できる。

中外製薬株式会社

  • 2021年〜2030年の中期環境目標として、フロン類使用量を2025年で25%削減、2030年で100%削減(2020年比)を目指す。
  • 設備切り替え時のダウンタイム短縮の回避。既存設備(小型エアコンユニット、大型ターボチラー等)で自然冷媒のオプションがないものへの対応といった各種課題を解決しつつ、業種の垣根を超えたアライアンスを提携したい。