PARTNERS
日本

【ATMO JP 2021】中外製薬、2030年の「フロン全廃」に向けた課題【エンドユーザーケーススタディ】

2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。中外製薬株式会社は「2030年までにフロン全廃」という自社の中期目標のもと、解決すべき多くの課題を参加者に共有してくれた。

2030年に「フロン全廃」の中期目標策定

1925年に創業した中外製薬。関東大震災によって深刻な薬不足となった状況を憂い、当時は主にドイツから薬品の輸入を行っていた。将来的に国内での製薬を目指し「中」「外」の言葉を取り社名とし、1961年に国民皆保険制度スタートと合わせ医療用医薬品の取扱へシフト。2002年にグローバルでトップシェアを誇るRoche(ロシュ社)と戦略的アライアンスを締結し、現在は国内に製造開発拠点および研究所を5拠点持ち、研究開発を進めている。

 

同社は2021年に中期環境目標を掲げ、気候変動対策に関しては2030年までに、各施設に使用されているフロン類を全廃するという目標を立てた(創薬研究を行なう鎌倉研究所・御殿場研究所は、2023年までに横浜に設立する新たな研究拠点に統合予定である)

 

この挑戦的なゴールは、環境へのコミットメントが非常に強いRocheに歩調を合わせた形でもある。目指すべきゴールは明確である一方で、その達成にはいくつもの課題があるとサステナビリティ推進部長の山田 茂裕氏は指摘する。

医薬品を安全・迅速に届ける体制を守りつつ機器更新へ

課題のひとつとして挙げられるのは、「機器更新に伴う事業活動、生産体制への影響回避」である。製薬会社として、患者に薬を届けられない事態はなんとしても回避したい状況だ。各拠点は研究設備・製薬設備ともに非常に厳格な管理体制があり、機器更新時のダウンタイムの圧縮・回避を目指しつつ、設定環境を逸脱しないよう、安定的に稼働できなくてはならない。同時に、アンモニア、炭化水素といった各冷媒に対して、作業者の安全を確保するための「法令や各種規制への対応」も必要となる。

 

また、現在各施設で使用されている機器の「代替オプションの不足」も重要なポイントだ。同社では使われている主な機器は、小型PAC(業務用エアコン)や1,600冷凍t規模の大型ターボチラー、空調用温水ヒートポンプなどが中心である。そのいずれも、自然冷媒機器に置き換える場合には大規模な工事および投資が必要だったり、そもそも代替が難しかったりという問題がある。

 

こうした課題の解決には、円滑な機器更新に安定稼働、信頼性の高いメンテナンスやトラブル対応体制、設計・施工期間の短縮等を含む迅速かつフレキシブルな対応、カタログ製品でカバーできるユーザーフレンドリーな製品提案といった、いくつもの要素が揃っていることが不可欠だ。

 

その上で、中外製薬はオープンイノベーションのスタイルで、業種を超えた枠組みで関係事業者と連携していきたい考えである。その上で、山田氏は現時点で道筋が見えていない目標に向かって、先進的な導入事例や技術を持つ参加者の力を借り、2030年のフロン全廃へ向け進めていきたいと話した。

 

バイオ分野は冷凍庫、空調、クリーンルーム、試験室等、製造研究で非常に幅広い製品を使用しています。全面的な切り替えのために、そのすべての領域が取り組むべき課題です。
 
本日お集まりの関連企業の皆様には、こうした悩みを抱えているエンドユーザーもいるとご認識いただきつつ、ぜひ協力して製品・技術開発していきたいと考えています。
中外製薬株式会社 サステナビリティ推進部長 山田 茂裕氏
Tweet

参考

【ATMOsphere Japan 2021】中外製薬株式会社発表資料