2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。CO2、炭化水素両冷媒のソリューションを提案するCAREL Japan株式会社は、中国で進められる様々な試験データを発表した。
CO2ソリューション「emj」の効果
小型機器にはR290、大型機器にはCO2に対応したソリューションを展開するCAREL Japan。同社は高効率なシステム稼働を可能にするトランスクリティカルCO2システムの制御イジェクター「emj」を展開している。システム中央側のCO2を、圧縮機に入る前に「emj」に入ることで加圧し、夏場でも効率アップが図れる。冷凍冷蔵機器の省エネに大きく関連する高段側の吸込み圧力ならびに制御目標圧力の2つを、「emj」は上昇させることができるという。
イタリアの拠点からの試算では、平均気温13.06℃の東京において、標準型のシステムと比較して9.6%の省エネが図れるという。2020年発表の東京の平均気温、16.5℃で計算した場合、省エネ効果は10%以上になるだろうと、営業技術の楊 宇辰氏は説明する。
emjは中国のメーカーの協力を受け、1号機を同国の国立施設である中国国立冷凍システムトレーニングセンターに設置。機器にはCARELの制御システム「pR300RT」のほか冷凍システム全般をCARELが提供した。1月に22日間行われた試験では、平均気温6.6℃(外気温:-2℃〜13℃)のなかで、約1.4%emjの介入実績があったという。
日本では2020年までに、累計200台以上のトランスクリティカルCO2システムに対するソリューションが採用され、そこにCARELの制御システムが使用されている。日本熱源システム株式会社の「スーパーグリーン」には「pR100T」が。パナソニック株式会社のラックシステムと有限会社柴田熔接工作所のラックシステムには、「pR300T」が採用されている。
加えて、パナソニックのラックシステムでは「cPCOmini」による機能のカスタマイズを可能とし、「boss mini」での遠隔監視を実現。柴田熔接工作所では高段・低段それぞれに「pR300T」を設置して管理するほか、「boss mini」での遠隔監視機能も備えている。「emjシステム」の国内採用事例はまだないため、現在パートナーを探している段階だ。
R290+VCC+IR33というソリューションの「最適解」
CAREL Japanは、R290のソリューションも展開している。同社は小型の内蔵型機器の次世代冷媒ソリューションとして、R290が最適であるという判断でシステムを提案。その理由に、代替フロン等とほぼ同等以上の運転効率かつ設計思想で制御でき、しかも更新難易度も非常に低いことが挙げられる。
このR290冷媒に加え、低騒音かつ優れた運転制御技術を発揮する「VCC」と、衛生管理手法HACCPに基づいた精密制御・スマート除霜といった機能を有する「IR33」を備えた、3点での提案を推奨する。制御が容易なR290に2つのソリューションを加えることで、HFC冷媒の既存システムよりも、最大40%の省エネ効果を発揮すると楊氏は言う。
中国メーカーの協力を得て行った上記システムの検証運転では、480Lの冷凍ショーケースにて、定速制御とVCCとを比較。前半12時間は閉店時を想定し、ショーケースのドアを密閉して計測。後半12時間は3分に1回、15秒でドアを開けるという開店時の想定で計測し、庫内温度変動量、庫内最大温度、エネルギー消費量を評価した。なお、いずれもR290冷媒150gを充填した同機種のケースである。
ドア密閉時の温度範囲は、一定速タイプが-28〜-22℃だったのに対して、VCC+IR33モデルは-24〜-22℃。Δtも前者は6℃、後者は2℃とはっきり性能差が分かれた。開放テスト時も、最大温度が定速側は-13.5℃だったのに対し、VCC+IR33のモデルは-16℃であった。
実測エネルギー消費量についても、定速と比べ約25%省エネになる。これを20211年1月時点の東京電力の料金から単純計算する場合、1台あたり年間約26,000円削減できるとした。
Carelの製品を用いることで、冷凍冷蔵機器のライフサイクル全体のコストダウンに加え、発電に伴うCO2排出量も軽減できる。今後も世界中で、ユーザーの地球環境保護活動をサポートしていきたいと楊氏は締めくくった。