2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。エンドユーザーケーススタディに登壇した株式会社ベニレイ・ロジスティクスは、パナソニック株式会社アプライアンス社と共同で国内初となったパナソニックの80馬力冷凍機導入プロジェクトを紹介。発表の2月15日は、奇しくも機器の引渡し日であった。
高い技術・長年の経験からの安心感
ベニレイ・ロジスティクスは国内に4事業所、総キャパシティ62,500tの倉庫を有する。今回自然冷媒冷凍機が採用されたのは、大阪府の港湾地区に位置し、約20,000tの保管能力を持つ大阪南港事業所であった。
サステナビリティの問題が叫ばれる昨今。フロン排出抑制法や2020年のR22生産終了、さらには同社が属する丸紅グループのサステナビリティ推進事業といった複数の状況が重なり、ベニレイ・ロジスティクスは環境配慮型の冷凍庫採用を検討。
当初は冷媒にアンモニア/CO2を検討していたが、冷凍機自体が大型であるため、建屋の一部を壊す・冷凍機の設置場所を変更するといった大改修工事が伴うと判明。工場の稼働が止まるほか、保管スペースが制限されるなどの課題が解決できなかった。そこで注目したのが、比較的小型なCO2冷媒採用の冷凍機だったという。
さらに、2018年に大阪地区を直撃した台風21号も、冷凍機選択に大きな影響を与えたと同社代表取締役社長の落合 浩氏(2021年2月時点。現在は退任し、矢野 雅之氏が同職を務める)は言う。台風により、大阪南港事業所は1階が高潮で浸水。外壁は剥がれ屋上のクーリングタワーも破損、防水シートもめくりあがるなど甚大な被害を被った。港湾地区という立地上、風水害のリスクは避けられない。これらの被害も検討材料に加わり、ベニレイ・ロジスティクスの機器選択は「空冷のCO2冷凍機」に絞られたのである。
2019年11月、今回の設置工事の元請け先である株式会社ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングより、パナソニックの大型CO2冷凍機製造に関する話を聞くと、2020年1月には同社の東京製作所への訪問が実現。同社工場の見学や技術関係者の説明を受け、確かな技術と蓄積されたノウハウへの安心から、選定に至った。
オールCO2の倉庫を、稼働を止めずに実現
今回、ベニレイ・ロジスティクスの大阪南港事業所に納入されたのは、合計18台の冷凍機である。冷媒はすべてCO2で、そのうち屋内設置型の80馬力冷凍機10台と同じく40馬力冷凍機4台が、国内初となる冷凍機となった。
2020年10月16日には、関係各社を招待した出荷式を開催。そこから納入・設置をはじめ、「ATMOsphere Japan 2021」が開催された2月15日に、無事引き渡し日を迎えることとなった。
今回導入された冷凍機は、ベニレイ・ロジスティクスの物件に合わせた専用機として調整も加えられている。80馬力冷凍機は200Lという大容量のタンク内蔵し、屋外に設置したガスクーラーは台風被害を考慮し、間接散水パッドとワイヤーガードを採用。機械室への放熱を避けるために屋外設置したデスーパーヒーターは、同社の2馬力冷凍機の筐体を用いて製作されたという。
落合氏は今後、大阪南港事業所よりデータは惜しみなく提供し、試験やテスト、現場見学にも積極的に協力し、冷凍事業の自然冷媒化およびパナソニックの機器開発推進に寄与したいと話す。
冷蔵倉庫業において、イニシャルコストは大きな課題だ。しかし冷凍機市場により多くの機器メーカーが参入し、さらなる技術革新と性能の向上・価格競争が起きれば、自然冷媒化はますます加速するのではと落合氏は期待する。
同社はフロン機器が残る神奈川県の東扇島事業所について、残る東扇島は、大阪南港事業所の減価償却が落ち着いたタイミングを見計らい、今後10年以内に更新したい考えである。

参考
【ATMOsphere Japan 2021】エンドユーザーケーススタディ 株式会社ベニレイ・ロジスティクス&パナソニック株式会社発表資料