2021年2月15日、オンラインにて開催されたshecco Japan主催の自然冷媒国際会議「ATMOsphere Japan 2021」。2020年厳しい経営状況に見舞われた株式会社エー・ピーホールディングスは、飲食産業の現状と脱フロンに臨む強い意思を示してくれた。
経営的苦難に直面した1年
「食のあるべき姿を追求する」をミッションに、国内外200店舗の飲食店のほか、食品加工工場・流通センター等も展開するエー・ピーホールディングス。生産、加工、流通、販売までを一貫して行なう「六次産業モデル」により、生産者が本業に専念できる環境を用意するとともに、消費者は適正価格で質の高いサービスを受け取れるという、生産と消費のよき架け橋を担っている。
そんなエー・ピーホールディングスだが、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大により、非常に厳しい社会状況での経営を強いられた。同年4、5月は断腸の思いで休業に踏み切り、6月以降も従業員をスーパーマーケット、物流会社に他社就労させつつ、本社移転によるコスト削減で苦境をしのいだと、株式会社エー・ピーホールディングス 執行役員の横澤 将司氏は話す。
守りだけではなく、6月以降のwithコロナの需要に合わせて宅配、食堂事業を展開していった。この全世界的な悲劇は、多くの企業のあり方・ビジネスモデルの転換を突きつける形となったのである。
こうした渦中にも、自然環境問題はリアリティのある存在として、頭の中にあったと横澤氏は言う。
当事者とつながるからこそ、環境問題を諦めない
エー・ピーホールディングスは、乱獲や気候変動が続けば、2048年には魚が穫れなくなる未来が来るという警鐘を啓蒙するため、「四十八(よんぱち)漁場」を関東中心に30店舗経営している。横澤氏は実際に全国の産地で働く漁師と交流しているが、彼らの口からは毎年のように「今年は異常だ」という言葉が飛び交う。
それは台風であったり、大雨であったり、水温上昇であったりとさまざまだ。特に水温上昇に関しては、この100年で日本近海の水温が約1℃上昇(日本海側は約1.5℃上昇)したという。これは陸地に置き換えれば8〜10℃の気温上昇にも匹敵し、地球から深刻な負のフィードバックが行われていることがよく分かる問題である。
エー・ピーホールディングスは2020年開催の「ATMOsphere Japan 2020」にも登壇し、いくつかの店舗で自然冷媒機器導入を検討していくと発表。しかしコロナ禍でそれが難しくなり、計画は振り出しへ戻ってしまった。
脱フロンのプロジェクトが白紙に戻ってしまったエー・ピーホールディングスだが、環境問題への意欲は失われていないと横澤氏は言う。なぜなら、同社は直接漁師=生産者とのつながりがあり、環境に対するフィードバックを直接知ることができるからだ。
この当事者意識に芽生えれば、飲食業界の関係者も一層環境問題に対して興味・関心を持って取り組めるだろうと、横澤氏は話す。
セミナーの最後に、横澤氏はスライドにて同氏の故郷であり、10年前の東日本大震災で失われてしまった岩手県陸前高田市の美しい海の写真を映し、発表を締めくくった。

参考
【ATMOsphere Japan 2021】エンドユーザーパネル 株式会社エー・ピーホールディングス発表資料