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国際的な賛同と規制緩和とどう向き合うか【ATMOsphere Japan 2020 レポート Part2】

2019年1月1日、モントリオール議定書キガリ改正が発効されてから、約1年が経過した。きたる目標達成に向け、国内ではノンフロン製品導入の促進を進める他、フロン機器の廃棄に関する規制強化に努めてきた。東京都が同機器に対する補助金の交付を始めたことも、記憶に新しい。政策動向セッションでは、そうした行政による法整備や、国際的な注目を浴びる炭化水素の充填量引き上げについて、最新動向が発表された。

国際的な「ライフサイクルマネジメント」を

環境省の地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室の室長である倉谷 英和氏は、同省で取り組むフルオロカーボン対策の国際展開と、新たに発足した「フルオロカーボン・イニシアティブ」について発表した。

 

International Energy Agency が2018年に発表した試算では、世界のエアコン普及数は2050 年で約56億台まで増加する見通しとされている。日本国内ではフロン排出抑制法など、代替フロンの廃棄時の管理体制構築に注力してきた。この枠組を、世界規模に広めていくことが重要である。「製造から廃棄まで、ライフサイクル全体にわたる総合的な対策が重要です」。将来的にストックされるフロン類に対処するため、日本が旗振り役となり国際的なイニシアティブが発足されたのである。

環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室 室長 倉谷 英和氏

2019年12月10日には、スペイン・マドリードにて開催されたCOP25の日本パビリオンにて、設立セレモニーを実施。小泉 進次郎環境大臣も出席のもと、11の賛同国・機関および10の賛同企業・団体を集めることとなった。今後イニシアティブではフロン類排出抑制計画の策定や実施協力、優良事例の共有などの活動に従事する。イニシアティブはさらに、国・企業・団体と幅広く賛同を募りつつ、フロン対策の国際展開と関係者間の連携強化を進める予定だ。

炭化水素の充填量引き上げの影響を注視

本会議では、昨年に続き国際電気標準会議(IEC) SC61C小委員会委員長のマレック・ジグリチンスキ氏も登壇。昨年、業界を大いにわかせた炭化水素の充填量引き上げに関して、採択までの経緯が語られた。IECのSC61Cは2014年、可燃性冷媒の充填量に関する議論を行うために立ち上げられた。既存の充填量制限150gから500gに引き上げることは、より大きな冷凍冷蔵器ショーケースに炭化水素を使用できることとなる。

 

「しかしながら、充填量を引き上げても、従来の規制と同等の安全性が求められます。議論だけでなく試験も行いながら、安全性を確保するために必要な要件を検討してきました」と、ジグリチンスキ氏は語った。そうして練られた改正案IEC 60335-2-89の第3版が、2019年6月20日に発行。FDIS(最終国際規格案)として、過半数の賛同を得られたことは周知の通りである。「今後、欧州、北米、日本、豪州の各国の製品基準も、この決定に追随していくこととなるでしょう。今後は各国の規制動向が、どれほどスピーディに行われるかに注視していきたいです」

国際電気標準会議(IEC) SC61C 小委員会委員長 マレック・ジグリチンスキ氏

炭化水素に関するニュースの影響か、ATMOsphere Japan2020の後に開催されたスーパーマーケット・トレードショー、HCJの両展示会にて、多くの炭化水素製品の参考出展が見られた。安全性の確保を大前提として、国内で充填量引き上げの波が広がれば、さらなるラインナップ拡充が見られるかもしれない。