2022年11月15日、16日とブリュッセルで開催された「ATMOsphere (ATMO) Europe Summit 2022」にて、オランダの発明家でありヒートポンプコンサルタントでもある、TripleAquaの最高経営責任者メンノ・ヴァン・デル・ホフが、プロパン(R290)ヒートポンプとR32の効率を比較。R32ユニットに対して、R290ヒートポンプに21~34%の効率改善が見られたことで、「R290ユニットはFガスユニットよりも効率が悪い」という俗説を覆した。
ヴァン・デル・ホフ氏はヒートポンプ分野で30年以上の経験を持ち、様々な多国籍大手ヒートポンプブランドのコンサルティングを手がけてきた。同氏が行った実験では、市場をリードするR32ポンプと、欧州ヒートポンプ協会(EHPA)認定のオーストリア製のR290ヒートポンプを選択。
その結果、35℃におけるR32の季節別COP(SCOP)は4.72(η=186%)だったが、R290のSCOPは5.66(η=226%)となり、21%改善された。また55℃では、R32のSCOPが3.39(η=133%)、R290が4.48(η=179%)となり、その差はさらに34%にまで広がった。
爆発的な需要
ヴァン・デル・ホフ氏は、ヒートポンプの世界市場が過去10年間で一貫して成長していることを示す市場データを紹介。市場はまだ成熟していないため、「爆発的な成長」が期待されると説明した。今後10年で、この市場は現在の3〜4倍になると予想されている。
2022年には、ドイツ、オランダ、ポーランドなどの一部の大規模製造国で100%以上の成長が見込まれ、イタリアの成長率は現在の売上高の143%になると、ヴァン・デル・ホフ氏はさまざまな業界レポートに基づいて発表した。事実、ドイツでは2022年8月時点で、2021年全体よりも多くのヒートポンプが登録された。今後、欧州で最も成長の可能性が高いのはフランスだという。
自然冷媒ヒートポンプの販売も伸びており、2022年から2027年にかけて9.5%(580万ドル→980万ドル)の複合年間成長率(CAGR)が見込まれている。ヴァン・デル・ホフ氏が共有したデータによると、最も大きな成長が見込まれるのは、200〜500kWレンジのCO2ヒートポンプだという。
未来は“自然冷媒”
Fガス規制や禁止案により、長期投資のビジョンを変更するCFO(最高財務責任者)が増える中、自然冷媒はより魅力的な選択肢になりつつあるとヴァン・デル・ホフ氏は説明する。これは、Fガスとその環境に対する影響に関する不確実性が高まっていることが主な原因だ。
「自然冷媒は、これから急速に市場に浸透していくでしょう。この市場は、早ければ2027年に成熟すると予測されています。その頃には、R32とR410Aは姿を消し、その多くがR290にとって代わられるでしょう」(ヴァン・デル・ホフ氏)
また同氏は、R290スプリットエアコンが市場に多く出回ることも期待している他、中・大容量のCO2ヒートポンプにも大きな可能性があると考えている。さらに、自然冷媒を利用した地域暖房の普及も視野に入れている。
参考
ATMO Europe: R290 Heat Pump Beats R32 on Efficiency
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
ATMOsphereネットワーク
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