2022年11月15日、16日とブリュッセルで開催された「ATMOsphere (ATMO) Europe Summit 2022」にて、スイスの多国籍食品企業ネスレは自然冷媒メーカーに対し、200℃の蒸気を発生できる高温炭化水素ヒートポンプを商品化するよう求めた。
Nestléは2,000以上のブランドを有し、世界186カ国で事業を展開している。2050年までにネットゼロを目指すことを公約に掲げ、現在、積極的に二酸化炭素排出量の削減に注力している。そのため、バリューチェーン全体における影響を把握するために、まず農場から消費者までの影響を測定したと、同社のグローバル冷凍リーダーであるヴィンセント・グラス氏(コーは説明する。
その結果、環境に最も大きな影響を与えるのは農産物であり、二酸化炭素排出量の65%は製品に使用される原材料に由来していることが判明した。次に大きな影響を与えるのはパッケージングの11%で、製造工程での二酸化炭素排出量は7%に過ぎないという。しかし、グラス氏はこの分野こそ、より早くネットゼロに移行するためにコントロールできる分野だと語る。
Nestléは、製造施設のカーボンフットプリントを削減するために、エネルギーの使用方法を見直している。エネルギーネットワークを再構築し、熱を大気中に放出するのではなく、再利用したいと考えているのである。そのため、同社はヒートポンプを導入した冷暖房システムを採用している。これにより、特定のプロセスで化石燃料を使用せず、暖房を脱炭素化することが可能だ。地域によっては、冷暖房を組み合わせることで、ボイラーを完全に置き換えることができるようになった。
Nestléは、これらのヒートポンプには可能な限り自然冷媒を使用している。自然冷媒の方が、一般的にエネルギー効率が高く将来性もあるからだ。
Nestléは、必要な温度に応じて炭化水素、CO2、アンモニア、またはこれらを組み合わせて使用している。排出量をさらに削減するため、同社は加工に必要な温度を下げ、ヒートポンプを可能な限り使用できるようにしようと工夫している。同様に、低温側ではオーバークールにならないよう、温度を上げる工夫をしている。統合制御とデジタルソリューションでプロセスを再設計することで、エネルギー消費はさらに削減されるとグラス氏は説明した。
ヒートポンプメーカーへの呼びかけ
Nestléの大きな課題は、自然冷媒ヒートポンプが現在達成できる温度よりも、非常に高い温度を必要とするプロセスがあるという点だ。グラス氏によると、同社は100〜120℃までの自然冷媒ヒートポンプを使用しているが、より高温での工程には、蒸気で加熱する必要があるプロセスもまだ多く残っているという。それにはバイオ燃料を使う地域もあるが、蒸気の生成は依然として、化石燃料が主体だ。

そこでNestléは、より効率的で持続可能な蒸気の供給方法を検討している。「ATMO Europe Summit 2022」の講演にて、グラス氏は次のように訴えた。
「私が会場の皆さんに求めたいのは、今あるギャップを埋めることです。私たちは、オペレーションから蒸気を取り除く必要があります。より高い温度を供給できるヒートポンプが必要なのです。現在市場に出ている蒸気発生ヒートポンプは、主にHFOで動いています。この市場には、自然冷媒の解決策は少ないです。私たちには、その解決策が一刻も早く必要です」(グラス氏)
グラス氏は、Nestléは高温蒸気を発生させるヒートポンプに、冷媒として炭化水素を使用する工業化やパイロットプロジェクトを積極的に支援すると述べた。グラス氏の発表に続いて行われた質疑応答では、株式会社前川製作所が、同社が200℃近くまで到達できるソリューションに取り組んでいるが、まだテスト段階であり、市場に出せる状態ではないことを伝えた。
参考
ATMO Europe: Nestlé Needs High-Temperature Hydrocarbon Heat Pumps for Steam Generation
※本記事は英語で作成後、日本語に翻訳されております。
ATMOsphereネットワーク
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