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自然冷媒を軸に、進化し続ける高効率システム【ATMOsphere Japan 2020 レポート Part3】

自然冷媒ソリューションの「生産」という入り口を担う、メーカー各社。数ある事業者の中でも、「業界リーダーセッション」では、国内の自然冷媒市場に多大に貢献してきた4社が登壇した。キガリ改正の発効から1年。エンドユーザーにも自然冷媒という選択肢が浸透している傾向にあり、メーカーは冷媒選択という観点から、自然冷媒を前提としたより高効率なシステム開発が求められている。一歩先のソリューションを追い求めるメーカーのリーダー達は、これからどんな未来を描こうとしているのだろうか。

50年以上の歴史が培った技術

パナソニック株式会社アプライアンス社 コールドチェーン事業部長 冨永 弘幸氏

パナソニック株式会社アプライアンス社 コールドチェーン事業部長の冨永 弘幸氏は、同社の事業概要とCO2機器の開発状況に言及した。創業以来、50年以上にわたりコールドチェーン事業に取り組んできた同社は、食品を安全に消費者の元へ運ぶことをミッションに、事業活動を続けてきた。パナソニックの代名詞とも呼べるCO2機器は、2010年より発売を開始。2015年に業務用冷凍・冷蔵ショーケースメーカーのHussman を傘下に入れ、2020年2月時点で累計4,200 店舗に12,000台のCO2導入を実現している他、海外でも700台のパナソニック製CO2機器が稼働している状況だ。

 

CO2冷凍機の開発は、「大容量化」と「COP向上」の2つを軸に続けられてきた。「現在は80馬力のラックシステムを準備しており、この流れをさらに加速させていきます」と、冨永氏は説明する。水冷式や排熱利用といったバリエーション拡大にも力が入る。2019年にハマ冷機工業株式会社と開発した、CO2水冷式内蔵型ショーケースはその事例の1 つだ。パナソニックは技術開発を通して、CO2のプロダクトレンジをさらに広げていき、産業分野も含め幅広いニーズに対応していきたい考えだ。

CO2システムの認知向上を実感した1年

日本熱源システム株式会社 代表取締役社長の原田 克彦氏からは、同社の主力ユニットである「スーパーグリーン」について、納入状況と新機種が発表された。産業用分野に向けて開発された「スーパーグリーン」は、2012年に開発。以来2020年2月までに、全国170台以上が納入されている。原田氏によれば、2019年後半より、エンドユーザーの自然冷媒への関心は強くなっているという。

日本熱源システム株式会社 代表取締役社長 原田 克彦氏

R22の国内生産が2020年1月1日よりゼロとなったことも、その要因の一つだろうと同氏は推察する。「スーパーグリーン」はC級とF級で、それぞれ30馬力、60馬力の計4 機種を揃えていたが、新機種として90馬力のF級を追加した。新機種は2019年10月、アサヒグループ食品株式会社の岡山工場で稼働している。

 

日本熱源システムのノンフロン機は、「スーパーグリーン」だけでなくフリーザー、ブラインチラーも活躍中だ。「40℃という猛暑の中でも、CO2機器はR22以上の省エネ効率を実現しました。環境と省エネ、どちらも両立できることをさらに周知したいと考えています」。同社は炭化水素ショーケースにも力を入れており、冷凍機メーカーのFreor製内蔵ショーケースおよびウォーターループシステムの納入にも力を入れている。「今後開催される展示会では、これら自然冷媒機器を強く提案していきます」

脱フロン・CO2排出量削減に尽力

世界を取り巻く環境変化は、深刻な状況にある。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のデータによれば、2050年までに、温室効果ガスなどのもたらす気温上昇を1.5℃以内に抑えなければ、人々の生活基盤が大きく損なわれてしまうという。株式会社前川製作所 ソリューション事業本部部長の江原 誠氏は、持続可能性を前提とした事業活動は、企業が負うべき社会的責任であると説明。

株式会社前川製作所 ソリューション事業本部部長 江原 誠氏

2019年12月までで、同社は日本に2,015台、アジア・オーストラリアに107 台、北米に6台と累計2,128台のアンモニア/CO2冷凍機を納入。2019 年までで、R404aとの比較で累計約115万t-CO2の削減に貢献してきた。同社はアンモニア/CO2だけでなく、CO2や空気冷媒にも対応している。「サイズや温度、運転条件などに応じて、最もエンドユーザー様に貢献できる冷凍機をご提案します」

 

脱フロンの技術開発を進める一方で、同社は冷蔵倉庫運用時のCO2排出量削減に向けたソリューション開発にも熱心だ。具体的には、「躯体防熱」「外気侵入・冷気漏えい対策」「デフロスト」「結露防止」「高性能な冷却設備」の5点に取り組む。例えば横吹き循環流型の最新式エアカーテンを使用することで、外気侵入と冷気漏えいをどちらも防止できる。平均遮断効率も75%と高く、庫内全体の運転効率を改善可能だ。「年々増加する自然冷媒へのニーズに対して、最適なシステムを提供していきたいです」

ノンフロンの啓蒙活動、地域から全国へ

フードテクノエンジニアリング株式会社 執行役員営業本部本部長 重里 広幸氏

フードテクノエンジニアリング株式会社はエンジニア業者として、食品加工工場に特化した知見を活かし、環境対応型のソリューションを日々開発・提案している。2017年には自然冷媒の特性やCOP、制御方法を学べる場所としてオープンラボ・FTE アカデミーを開設。同社の執行役員営業本部本部長を務める重里 広幸氏は、「同アカデミーでは、全国から就業体験を受け入れています。アカデミーの活動を通じて、地元から日本および世界へ環境・エネルギーのソリューションを発信できる企業になれるよう努めています」と話す。

 

アカデミーの検証実験は主に4 種類の方法で取り組む。

  

  • 水冷式・空冷式療法の環境実験室にて、季節環境を人工的に作った上での効果的な制御プログラムの策定
  • ロータリー、レシプロ両タイプの冷凍機の運転特性や相違点の研究
  • フリーザー・冷凍機の実機ベースの運転データ収集と、制御プログラムへの活用
  • 2019年度に設置した、本社テストルームの加熱冷却スパイラルフリーザー設備について、排熱回収システムを導入した上で実機ベースのデータ収集

 

「一社のみの活動にとどまらず、産学で連携をしながら、自然冷媒の研究開発を進めていきたいところです」と、重里氏は話した。

 

登壇者の発表後は、簡易的なパネルディスカッションも実施。冷凍製造倉庫や食品加工工場では、自然冷媒採用だけでなくIoTによるシステムコントロールも、注目されている分野である。4社は社内での技術開発を踏まえたうえで、主に遠隔システムや制御開発の開発、精度向上が運転効率に大きく影響すると語った。