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【ATMO APAC Summit 2022】Arneg、CO2統合ソリューションの最新事例【技術ケーススタディ】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

技術ケーススタディに登壇したArneg Korea 海外セールスマネージャーのガブリエル・セレナーニ氏は、同社によるCO2「統合型」ソリューションの特徴を紹介。空調分野にも進出する自然冷媒システムの、最新事例を紹介してくれた。

統合型ソリューションの成果

Arnegは1953年に創業し、現在世界20カ国に工場を持つ。セレナーニ氏が所属するArneg Koreaも、韓国内にオフィスと工場を構える。創業以来、コールドチェーン分野でさまざまな商品を提供してきた。

 

CO2冷却システムは、冷却能力が450kW以上のタイプも用意し、さまざまな冷凍冷蔵ニーズに対応可能だ。CO2システムは同社の本拠地であるイタリアを起点に、欧州、アフリカ、北米・南米、アジア、オセアニアの各地域に展開。もっとも納入数の多いトランスクリティカル(TC) ブースターシステムは、2021年12月末で980ユニットが納品され稼働している。

 

そして現在、Arnegが注力しているのが冷凍冷蔵システムと空調との統合型ソリューションだ。同ソリューションの推進の背景には、厳格化されるFガス規制への対応、省エネ効果ニーズへの対応、そして市場からの要望への対応などがあったと、セレナーニ氏は話す。

 

CO2システムは、夏場の冷房負荷が高いわけだが、空調に必要な冷凍能力を確保するため、コンプレッサーに追加された冷凍機によって、必要な負荷が供給できるようにした。

 

また、冷凍機の排熱を利用して、衛生設備用の温水の生産量を増やすことも可能だ。冬季は、冷凍機の排熱を他の熱源と統合し、必要な時に必要な熱を供給できるようにしている。温水はトイレや厨房、暖房にそれぞれ活用する。夏季には、CO2システムを店内冷房、ショーケースの冷却に活用。排熱利用に関しても、温水は衛生設備で活用される。

 

セレナーニ氏は、イタリア・ベローナの店舗(店舗面積:1,672㎡)での事例を紹介。ベローナは最高気温37℃・最低気温-7℃と寒暖差が激しい。店舗へシステムを導入する前に、必要電力量の検証を行ったところ、以下のことがわかったという。

 

  • 温水製造のため、年間を通じて暖房負荷が必要
  • 厨房やサーバールームの冷却のために、年間を通じて少量の冷房負荷が必要
  • ショーケースはすべてオープンタイプであるため、夏季の空調の一部をまかなえる

 

Arnegは、もしも同店舗に「統合型ソリューション」と「標準型ソリューション」を採用した場合、消費電力量にどれだけの差が生じるかを試算。その結果、統合型ソリューションは、従来の標準型ソリューションよりも43.66%消費電力量を改善できるという結果が出たという。

 

各試算の後、Arnegはこの店舗に統合型ソリューションを設置し、1年間の運転実績を検証。当初想定して気温を上回ったが(特に夏季に大きな差異が出た)、当初想定していたスペックをおおよそ達成したという。結果として、年間の消費電力量は想定より7.64%多かった。その要因として、4〜10月に想定より気温が高くなり、電力負荷が増したことが挙げられる。

 

この結果から、Arnegは投資利益率(ROI)の観点でこのシステムを評価し、暖房が必要な冬季において、統合システムは大きな利益があると結論づけた。さらに春季・秋季の場合、ほぼ電力消費なしで温水の利用ができたという。

 

初期費用は標準型システムより高くなるものの、3年未満で投資回収できるだろうとセレナーニ氏は話す(この試算は2020年に行われたものであるため、現在の冷媒・資材価格を試算すると変動する可能性があるだろう)。統合システムは、省エネ以外にも「省スペース」「メンテナンスが容易」といったメリットも享受できると、セレナーニ氏は付け加えた。

参考

Arneg Korea 海外セールスマネージャー ガブリエル・セレナーニ氏