一般家庭の食卓、飲食の場に、数多くのヒット商品を送り出す味の素冷凍食品株式会社。環境省の令和2年度補助金にも、同社の案件が採択され、計画通りの導入が着々と進められている。
国内7工場にて順次設備更新
環境省による令和2年度「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」。2020年9月時点で第2次公募までの交付先が決定・公表されているが、そのうち味の素冷凍食品は、合計4事業所の導入計画で採択された。
内訳はつぎの通りである。
- 関東工場:アンモニア冷凍機1台
- 中部工場:フリーザー用アンモニア/CO2冷凍機3台、製品庫用CO2冷凍機2台
- 千葉工場:CO2冷凍機1台
- 埼玉工場:CO2冷凍機2台
採用した冷凍機は、日本熱源システム会社およびパナソニック株式会社および株式会社前川製作所のものである。直近で導入した自然冷媒機器は、フロン機器と比較して30%〜40%の省エネ効果を達成した。
「アンモニア冷凍機では配管・シール面の老朽化による冷媒漏れの懸念はあったものの、想定外のトラブル・事故にはつながっていません。CO2直膨システムは導入から3年と間もないシステムでもあるので、今後年数経過でどのような反応を示すか注視しています」
生産戦略部 吉野 正二氏
コロナ禍でも計画は変わらず進行
味の素冷凍食品は、本導入計画を2019年度に立案し実行に移している。それ以外にも、同社はフリーザーを2020年度末までに脱フロンし自然冷媒化。冷凍冷蔵設備に使用しているHCFC冷媒は2020年度末までに全廃。HFC冷媒も2030年度までに脱フロンし自然冷媒化する目標を掲げる。
新型コロナウイルス感染症による事業の影響について、吉野氏は計画に大きな変更はないと語る。メーカーサイドでは海外からの部品調達の納期延長といったトラブルがあったものの、現在は予定通りの調達が可能だ。
「今後は『2030年までにHFC冷媒の全廃』という目標に向け、脱フロン化を進めていくこととなるでしょう。弊社目標の達成の上でも、自然冷媒機器のイニシャルコストを軽減できる補助金の存在は、まだまだ必要だと感じます」(吉野氏)
同社も会員である一般社団法人 日本冷凍食品協会は、現在112社の企業が正会員として所属する。今後業界全体が脱フロンに向けて動いていかなくてはならないが、味の素冷凍食品ほど計画的に資金を投入して設備更新・新設に動ける企業は少ないのが現状だ。
こうした現状を打開する上でも、補助金は重要な立ち位置にいるだろうということを、吉野氏は強調する。
加えて、次のようなメーカー・専門家による技術開発への期待も、増すばかりである。
- 空調等の温度帯での脱フロン化
- 冷媒充填量の少量化、漏えいを未然に防ぐ溶接技術向上など、安全に稼働できる設備開発
- エネルギー効率のさらなる向上
「弊社も属する味の素グループが、SDGsの一環として環境配慮の取り組みに尽力しています。私達もそれに倣い、早め早めの一手を打つことが重要と考えます」(吉野氏)。