2020年11月に開催された「ATMOsphere Asia 2020」以前 、フィリピンは10月23日、10月26日、11月8日と3つの大きな台風に見舞われた。特に11月8日の台風22号(ユリシーズ)は5段階中4レベルに相当する台風を記録し、過去10年以上の観測史上で最悪の洪水を首都マニラに引き起こした。
フィリピンを拠点とするAGREA InternationalのCEOであるチェリー・アティラーノ氏は、「ATMOsphere Asia 2020」での産業用分野のセッションにて、災害が同国の農業および漁業に及ぼす影響は甚大であるがゆえに、クリーンな冷却技術に支えられた堅牢なコールドチェーンが求められていると訴えた。「私たちの国には、クリーンな冷却システムをはじめとしてたより持続可能な技術が必要なのです」(アティラーノ氏)
AGREA Internationalは、フィリピンでの農業経済を通じて、食料安全保障の確立、貧困根絶、フィリ農業および漁業家族の気候変動の影響を緩和を目的とした企業である。同社はユリシーズで被害を受けた23,000人以上の農民と、協力して農業再興にあたっているという。こうした活動は、農業分野の冷蔵部門への開発介入を視野に入れた場合、現地での被害状況を知り、十分な耐久性のある設備を作るために、必要なことなのだとアティラーノ氏は言う。
そのうえ、台風を襲った時期には、世界を脅かし続けている新型コロナウイルス感染症拡大が重なってしまった。この間のフィリピンの農業部門の損失は、前年比75%にまで達しているという。この事態に対して、AGREA Internationalは俯瞰した立場から、コールドチェーンを含むあらゆる分野で状況改善に取り組んでいる。
コストが最大の課題
これらの活動において、最大の課題となるのが資金提供である。災害対策・環境配慮の小型ポータブル冷蔵倉庫を設立しようにも、現地農家にそれを買う余裕はないとアティラーノ氏は言う。「現地の農家の方々にとって、約100万ペソ(約2万米ドル)のコストは、決して手頃ではありません」
農家へ冷蔵設備を活用することで、経済的にどれだけの利益を得られるかを説明しているが、その有用性に気づいたとしても、初期費用の話題に直面すると、議論がそこで止まってしまう。その考え方・価格認識とどう向き合うかが、フィリピンの農業・漁業の未来を大きく左右することとなるだろう。
参考記事
Typhoons, COVID-19 Underscore Need for Clean Cooling in Philippines