2022年8月30日、イオンリテール株式会社は千葉県浦安市の「イオンスタイル新浦安MONA」の1階エリアにて、日本最大級の1,500品目の冷凍食品を取り揃えるフローズンショップ「@FROZEN」をオープンした。
同社は、時短調理やまとめ買いに便利なだけでなく、保存料の少なさや調理済といった観点から健康や食品廃棄の削減にも繋がる冷凍食品の売場面積や品揃えの拡大に取り組んできた。「@FROZEN」では「朝食」「ランチ」「ディナー」「おつまみ」「スイーツ」といった5つの食事機会をテーマに、日常づかいの品から有名店の味、世界各国のトレンドの味を用意。
そんな新業態の店舗づくりにおいて、イオンリテールが選択したのは55台のダイキン工業株式会社製のR290内蔵型ショーケース(「SINGAPORE」シリーズ)だ。これだけの規模の採用は、イオンリテールにとって初の取り組みである。
いくつもの課題をすべてクリア
イオンは、2009年に日本の小売業で初めて自然冷媒の冷凍・冷蔵ケースを導入した。以降、新店舗や既存店の改装時に自然冷媒機器の導入を進めている。
開発本部 建設統括部 建設企画部の片岡 潔氏は、今回、R290内蔵型ショーケースを大規模採用した背景に、複数の課題をクリアする必要があったと話す。
一つ目の課題は「排水」だ。「@FROZEN」開店にあたっての工事では、別業態からの改装にあたり、建築制限によって床を斫ることが難しいと判断。冷媒配管用のピットだけでなく、霜を取り除くために必要な排水ピットも準備できないことが判明。これらを必要としないショーケースであることが必須だった。
二つ目の課題は「スペース」だ。従来より、イオンリテールは別置型のショーケースを広く採用しているが、「@FROZEN」の店舗スペースは、機械室やバックルームが十分に確保できず、冷凍機置き場を用意できない。「イオンスタイル新浦安MONA」は、屋上階に冷凍機の設置スペースが用意されている。そこから各階を貫通させて、冷媒配管を通す。そして、機械室に設置したコンプレッサーを介し、売場のショーケースに接続するという選択肢もあったが、多大な作業量とコストが大きな問題となった。
これらの課題をすべてクリアしたのが、ダイキン工業のR290内蔵型ショーケースだ。庫内のコンプレッサーの熱で排水を自然蒸発させることで、排水ピットが不要となった。また、内蔵型ショーケースに必要なのは電源工事のみで、各種設備の設置スペースも大きく減らせた。なお、他社製の壁面の別置型リーチインショーケースの一部は、後方にバキューム排水設備EVACシステムを用意することで、排水に対応した。

メリットを多く享受
ダイキン工業のショーケースを採用することには、いくつものメリットがあったと片岡氏は話す。
まずは排熱量削減だ。他社の内蔵型ショーケースや別置型ショーケースと比較した場合、ダイキン製ショーケースは排熱量を約1/6にまで減らすことができると判明。排熱量が少ないということは、都市型店舗や住宅密集地に隣接の小型店舗にも、同ショーケースを採用しやすいことを意味する。消費電力量も、他のショーケースと比較して約50~60%程度削減できると試算する。
冷媒配管工事、排水工事が不要という点も相まって、フレキシブルな売場計画を検討可能という点が、このショーケースの大きなメリットと言えるだろう。
温度の安定性という点も、ガラス扉が標準仕様であるダイキン工業製ショーケースはメリットが多い。一般的なファン方にて冷気を循環させる平型ショーケースのように、店内空調によって温度が変動しにくいためだ。自然対流で庫内を冷却する「無風冷却方式」を採用するダイキン工業製内蔵型ショーケースは、週2回のデフロストで霜付きを防げるという。フィルターレス構造の為、一般的な内蔵型ショーケースに必要なフィルターの定期清掃も不要だ。
現在のところ、ガラス扉の結露も見られず、クリアな視界が保たれている。通常のショーケースでは1日2回のデフロストを行うため、その頻度が気になる点ではあるが、今の所は問題がないと片岡氏は話す。今後も定期的なチェックを行い、状況を確認していきたい考えだ。
イオングループ全体でも、R290内蔵ショーケースの使用事例が増えている。2022年6月の「ATMOsphere APAC Summit 2022」では、直近で100台以上の導入が進んでいるとイオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木 隆博氏が説明。今回の事例はイオンの自然冷媒設備の導入をさらに大きく前進させるものとなるだろう。