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【ATMO APAC Summit 2022】イオン、自然冷媒化の成果と脱炭素ビジョンの戦略を発表【エンドユーザーパネル】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

エンドユーザーパネルでは、イオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木 隆博氏が登壇。10年以上に渡りショーケースの自然冷媒化を進める同社の、現在までの取り組みや将来に向けた戦略が発表された。

イオングループの環境基本方針

イオングループは、2022年6月時点で約2万店舗、大型から小型と様々な業態で店舗展開をしており、冷凍冷蔵ショーケースを多数使用している。サプライチェーン全体が及ぼす環境負荷を鑑みて、上流から下流まで環境負荷軽減を目指す必要があると、鈴木氏は説明。そのなかで、店舗運営によるフロン漏えいを重要な要素と位置づけ、サプライヤーと協力して解決していきたいと話した。

 

環境負荷低減については、グループとしてその取組が成長に利するものだと、社内外に周知のうえ、調整を行っているという。時にハードな交渉をグループ内で行い、これが経済性のある話であるという認識を持った上で、環境面では脱炭素を一丁目一番地におき、温室効果ガス削減に取り組む。

 

将来的な気候変動リスクに対して、平均気温が4℃上昇する世界と2℃にとどまる世界とで、イオンのビジネスにどのような影響があるかというシナリオも作成。現在進行系でフロン規制が強化されるなか、イオングループとして多数保有する冷凍冷蔵ショーケースの自然冷媒化を、具体的な計画に落とし込み実行する必要があるとした。

「イオン 自然冷媒宣言」の進化

イオンは2011年、「イオン 自然冷媒化宣言」を発表。さらには「イオン 脱炭素ビジョン」にて、2050年までのネットゼロを目標に掲げている。2030年までの中間目標としては、温室効果ガスの50%削減を掲げる。イオングループとして、年間40万トン以上ものフロン漏えい量がある。ここを後回しにすると、脱炭素ビジョンが達成できないと鈴木氏は強調した。

 

「イオン 自然冷媒宣言」以降、イオンは新店舗について原則自然冷媒ショーケースを採用すると選択した。現在では、新店舗に限らず既存店にも積極的に自然冷媒化を促進すべきとして、社内で自然冷媒タスクチームを結成し、組織的な導入を計画中である。

R290への注目

2022年6月時点で、イオンは累計1,223店舗に自然冷媒機器を導入。その大半が小型店舗とドラッグストアだ。台数ベースでは大型店のほうが多いが、多種多様な業態に渡って自然冷媒機器を展開できるよう、グループで進めているという。

 

直近の導入事例としては、2021年に約947尺入れた「イオンスタイル新利府」をオープンさせた。同店舗ではパナソニック株式会社製のCO2冷凍冷蔵システムを採用し、環境省の「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型 自然冷媒機器導入加速化事業」を活用している。同事業による導入加速の重要性は、社内でも周知されているため、事業活用を念頭に計画を策定しているという。

 

とはいえ、補助事業のタイミングが合わない店舗もある。同年オープンした「イオンスタイル白山」(石川県)では、補助事業のタイミングが合わなかったものの、同社の方針に従い自然冷媒機器を採用した。

 

現在力を入れているのは、自然冷媒内蔵型の平ショーケースへの切り替えだ。使用冷媒はR290が中心で、直近で100台以上の導入が進んでいる。既存店内で、すべての機器更新にハードルがある中、設置のしやすさが大きな利点となっている。現在は既存店の棚卸しを進め、積極的に導入しているところだ。

 

今後の課題については、新店舗の自然冷媒導入拡大はそのまま進めつつ、補助金の拡大やボリューム発注による機器導入コスト削減などを検討中だ。それと平行して、R290ショーケースの導入数拡大も今後加速していきたい。

 

そして、現在イオングループは具体的な自然冷媒化のロードマップを策定している。昨年から社内に横断的なタスクチームを立ち上げて、各社と具体的な交渉を進めています。漏えい対策をしながら、「設置から○年以上経過したショーケースを順次更新していく」というスケジュールを、グループの中で基準を設けていきたい。

 

イオングループとして、自然冷媒化を温室効果ガス削減対策におけるフロン削減のための整合性ある方策として位置づけ、取り組みを推進していきたい考えです。

イオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木 隆博氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

イオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木 隆博氏