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【ATMO APAC Summit 2022】芳雄製氷冷蔵、排熱回収の可能性を数字で実証【エンドユーザーパネル】

2022年6月27日、ATMOsphere主催の国際会議「ATMOsphere(ATMO) APAC Summit 2022」の一日目となるイベントが、東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。二日間の日程で開催される本イベントにおいて、一日目は日本市場に焦点を当てた各種セッションが展開された。

 

エンドユーザーパネルでは、芳雄製氷冷蔵株式会社 代表取締役 小金丸 滋勝氏が登壇。2018年より日本熱源システム株式会社のCO2冷凍機「スーパーグリーン」導入を進める同社の、最新事例を発表してくれた。

2年の実績を紹介

1935年に創業した芳雄製氷冷蔵は、倉庫業(冷蔵倉庫、普通倉庫)・自動車運送貨物取扱業・食品加工を3拠点で運営。同社の設備更新において、選ばれた冷媒はCO2を選択した。体積あたりの熱量CO2冷媒のエンタルピーは自然冷媒の中では大きくはないものの、比体積が小さい。そのため単位体積当たりの熱量は、R-22の7倍、NH3の8.6倍と非常に高く、すべての装置を小型化できるというメリットに魅力を感じたという。圧力の高さを差し引いても、この冷媒を使う価値があると小金丸氏は判断した。

 

2020年4月には穂波第1センター8,000設備トンのうち、7,000設備トンをR22からCO2冷凍機に更新。R-22冷却設備は全て定速機だったが、自然冷媒(CO2)冷却設備は負荷追従型のインバータ制御機であることから、中間期および冬期も運転が安定している。

 

1年目(2020年度)は最適な運転効率の模索により、制御設定などを調整しながらではあったが、2018年度に使用していたR22定速機と比較して年間で24.6%の省エネを実現。2年目(2021年度)は蓄積したノウハウを活かし、冷却器の風量、デフロストタイミング、デフロストの温ブラインなど各種調整を実施。結果として、前年度より9ポイント高い34.1%の省エネを達成した(2018年度比)。

CO2冷凍機+排熱利用の可能性

同社で使用されているCO2冷凍機では、低段側の吐出排熱を利用し、ブラインを加温して冷却器(50kW)2台のデフロストに利用されている。1年目は温ブラインの活用に調整が必要であり、電気ヒーターを使用する機会が多かったという。2年目には電気ヒーターをほぼ使わずに排熱利用ができたことで、省エネに大きく貢献したのではと小金丸氏は分析する。

 

穂波第1センターには、2台のクーラーが設置されている。1台のクーラーを40時間毎にデフロストするので、2台のクーラーを交互にデフロストすると24時間×365日÷40時間×2台=438回/年の加温回数となる。デフロスト時間を短縮する為に38°Cで供給を始めると、 1回のデフロストでブラインが16°C冷却される。

 

電気ヒータの加熱効率を90%とし、8時間で16°C加温、ブラインの質量を1000kg、ブラインの比熱を1.0として計算すると、(38-22)×1000kg÷90%×438回×24時間/8時間=23,360,000kcal23,360,000kcal÷860kcal=27,163kWとなる。つまり、電気ヒーターで加温すると、使用電力量は27,163kwhにものぼるのだ。同様の計算で、もう一つのクーラーの使用電力量は11,665kWhになる。

 

つまり排熱回収システムの導入により、年間合計で38,828kwhの電力回収が得られたこととなる。この数字は、芳雄製氷の2021年11月の使用電力量(37,522kWh)を上回る数字だ。CO2冷凍機は夏場も非常に安定に稼働し、省エネ効果も高い。これまで追加の電力で行っていた低段側のデフロストを、これまで捨てていた排熱を利用することで、大きな電力削減効果が期待できる。

 

同社では新たに、荷捌きの除湿に対しても、冷凍機の高段側の排熱を利用したデシカント除湿を導入する。今夏の運転を通じて、熱回収の効果検証を行う予定だ。

 

CO2は、中小事業者が使うことの多い冷媒です。熱を余すことなく使うことで、CO2非常に高い省エネ効果が期待できます。

芳雄製氷冷蔵株式会社 代表取締役 小金丸 滋勝氏

参考

「ATMO APAC Summit 2022」

芳雄製氷冷蔵株式会社 代表取締役 小金丸 滋勝氏